「ドラえもん」ジャイアンリサイタル

ジャイアンの歌で害虫駆除も

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▲原作漫画のジャイアンの歌声といえば「ボェ〜」である。もはやどんな歌を歌っているのかさえ分からない・・・・・・。

歌好きとして知られるジャイアンだが、皆さんもご存知の通り、彼の歌声は間違っても美声とは言いかねるようだ。
原作漫画では、「ボエ〜」とか「ボゲェ〜」、「ホゲ〜」とか「オエ〜」などと表現され、不思議なことにどんな歌を歌っても、全部そのようにしか聴こえない。
どうやらジャイアンの歌声は、歌詞を聴き取る事すら不可能なようなのだ。


更にその歌声を聴いた者は、めまいや吐き気、頭痛に襲われ、ドラえもんやのび太曰く、「命にかかわる」こともあるのだそう。
たまたま点けていたテレビで、ジャイアンの歌を聴いてしまった担任の先生が、その歌声の衝撃で気を失い、次の日、学校へ出て来られなかったというエピソードもある。


しかし、担任の先生は、普段ジャイアンの歌を聴く機会はめったにないからまだいいのだ。
問題は音楽の先生である。


音楽の先生はしょっちゅう彼の歌声を聴かなければならない立場にある。
あまりにひどい歌声だからと、耳を塞いでいたら、彼の歌を評価することが出来ない。


いったいどうやって乗り切っているのか、非常に気になるところである。
もしかして、さんざん聴かされて、もう慣れてしまい、抗体のようなものが出来ているのかもしれない・・・・・・。


そしてやっかいなことに、彼の歌声は聴いた者に健康被害をもたらすだけでなく、空気振動を引き起こし、窓ガラスや壁にヒビが入ることもある。
もはやここまで来ると、ちょっとした兵器と言っても過言ではないだろう。


きっと、彼ほどの能力は、各国の軍の研究機関が、喉から手が出るほど欲しいに違いない。
ジャイアンが人知れず、他国に連れ去られたりしないことを祈って止まない・・・・・・。


そんなジャイアンの歌声は、ドラえもんの秘密道具、「驚音波発振式虫退治機」を使って威力を増幅され、なんとネズミやゴキブリなどの、害虫駆除に使われたこともある。
どうでもいいが、「驚音波発振式虫退治機」って、なんだか中国語みたいである。


それにしても、この「驚音波発振式虫退治機」は、まるでジャイアンの歌声を利用することを前提に開発されたような機械である。
ジャイアンの歌声以外に、いったいどんな「驚音波」があるのか気になるところだが、彼の歌声以上の「驚音波」など、この世に存在しないのではないかと思うのは、きっと私だけではあるまい・・・・・・。


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▲リサイタルの時ジャイアンが乗っているのは木のみかん箱。現代の子供たちにはピンと来ないだろうが、ドラえもん連載開始当時の1970年代は、みかんやりんごはまだぎりぎり木箱で流通している時期があったのだ・・・・・・。

ジャイアンと言えばリサイタルだ。
会場はいつもの空き地で、ジャイアンはみかん箱を伏せてその上に乗り、「ボゲェ〜」と熱唱する。
観客は地べたに直接座って、歌が終わるまで、ただひたすら耐えるというパターンが多い。


ちなみにここで言う「みかん箱」とは、現代のダンボール箱のことを指しているのではない。
ドラえもんの連載開始当初の1970年代は、まだぎりぎりみかんやりんごは、木箱に入れられて流通していた時期があったのだ。
木箱は丈夫なので、人ひとり乗ったぐらいでは、潰れたりすることはなかったのである。


ちなみに通常のスタイルのリサイタルで、最も被害に会っているのは、ドラえもん、のび太、しずかちゃん、スネ夫の4人で、それにプラスして、2〜3名が運悪くジャイアンに見つかり、捕まっていることがある。


そして、通常のスタイルがあるということは、「通常ではないスタイル」もあるということになる。
そのような大掛かりなリサイタルを行う時には、空き地の入り口に、自分で看板やアーチを設置して、観客席には例のみかん箱をたくさん並べて、椅子代わりにしたりしている。


また、わざわざチケットまで作って、同級生を脅して売りつけるという暴挙に出ることもある。
ここまで来ると、もはや犯罪に近いのだが、特別何か問題が起きる訳でもなく、その後もジャイアンリサイタルは、いつも通り開催されている。


また、連載が進むと、ジャイアンリサイタルは更にエスカレート。
ジャイアンはドラえもんの道具にまで頼りだし、ど派手な衣装を作ったり、豪華なステージセットを組んだりと、やりたい放題になって来る・・・・・・。


原作漫画では、「ボェ〜」とか「ボゲェ〜」、「ホゲ〜」とか「オエ〜」などと、いったい何の歌を歌っているのかすら分からないジャイアンの歌声なのだが、14巻収録のエピソードでは、「まいにち、まいにち、ぼくらはてっぱんのお〜〜」と、珍しくちゃんと歌詞を聴き取ることが出来ていた。


ちなみにこの歌詞、昭和生まれの人なら、すぐにピンと来ただろう。
そう、1975年に発売され大ヒットした、「およげたいやきくん」である。
その売り上げ枚数は、なんと454万枚であったというから驚きだ。


そして次の曲は、「これっきり、これっきり、これっきりですかあ〜〜」と熱唱しているところを見ると、これはどうやら山口百恵さんの1976年のヒット曲、「横須賀ストーリー」だろう。
自信のオリジナル曲が多いと思われていたジャイアンだが、こんな流行りの歌もレパートリーにしていたようだ。


ところで、この時はジャイアンにしては珍しく、歌詞をちゃんと聴き取ることが出来ていた。
ということは、「いつもより少しはましな歌声だったのかな〜?」とも一瞬は思ったのだが、歌が終わるのを、ただひたすら待ち続ける、ドラえもんやのび太、しずかちゃんやスネ夫の表情は、いつも通り苦悶に満ちたもので、ジャイアンの歌声は、歌詞が聴き取れようが、聴き取れまいが、どちらにしてもやっぱり強烈なようである・・・・・・。