「謎フレーズ探偵」みっちゃんみちみちうんこたれて C

「みっちゃん」歌詞の奥深さ

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「みっちゃんみちみちうんこたれて〜、紙がないから手で拭いて〜、もったいないからなめちゃった(食べちゃった) ♪」


子供の頃に誰もが歌ったことがあるであろうこの歌は、じつは19世紀にはすでに歌われていたらしく、昭和の初期にはもう全国へ広まっていたという。


そして今回はこの歌の最後のフレーズ、「もったいないからなめちゃった(食べちゃった)」に込められた真の意味と、歴史的背景について探って行こうと思っている。


普通に考えたら、道端でうんこをしたはいいが、紙を持ち合わせておらず、仕方がないので自分の手で拭いてしまい、手に付いたうんこをじっと見つめて、「これはもったいないな〜」などと思って、それをペロリとなめちゃうやつなんて絶対にいないだろう。


じつはこの、「もったいないからなめちゃった(食べちゃった)」という歌詞には、当時の日本人の生活習慣が深く関わっていたようなのだ・・・・・・。


牛や馬、ニワトリの糞は、発酵させて堆肥にすることで、農作物の肥料として利用することが出来るようになる。
園芸店に行けば、「発酵牛糞」や「発酵鶏糞」の商品名で売られているので、ご存知のかたも多いかと思う。


そして今では考えられないことだが、かつての日本では人糞も肥料として利用されていたことがあった。


しかし、人糞をそのまま畑に撒けばいいという訳ではなくて、牛糞や鶏糞と同様に、まずは発酵をさせなければならなかった。
発酵をさせていないものを畑に撒いても、作物の根が腐ってしまうだけで、なんの意味もないからだ・・・・・・。


で、この発酵のために使われていたのが「肥溜め」で、昔は畑の隅や道端に必ず設置されていたそうである。


「肥溜め」の見た目はマンホールほどの大きさの丸い穴だったり、地面に埋められた大きな壺のようなものを利用している所もあったそうだ。
そしてこの「肥溜め」に糞尿を汲んで来て溜めておくことになる訳だ。


昔のトイレは現在のような水洗トイレではなく、いわゆる「ボットン便所」だったので、トイレの下に大きな貯水槽のようなものが埋められており、ここに糞尿が溜まって行く仕組みになっていた。


そしてそれを家の外から汲み出せるようになっていたのだ。
で、ここから汲み出した糞尿を「肥溜め」に移すことで、発酵を促していたのである。


糞尿を「肥溜め」に一定期間置いておくことで、自然に発酵が起こり、70℃以上の熱が発生し、これにより寄生虫などが死んで行くことになる。


そしてそれと同時に、次第に臭いもしなくなって行くのだ。


発酵済みの糞尿は腐葉土や稲藁と混ぜて堆肥が作られる。
そしてこれを畑に肥料として撒く訳だ・・・・・・。


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このようにして作った堆肥には、ミミズがたくさん発生する。


そしてこのミミズが有機物や微生物を食べて糞をすることで、畑の土壌に団粒構造が生まれ、土の通気性がよくなり、その結果、農作物の成長が促進されることに繋がるのだ。


このように人糞を利用した肥料は、農作物にとって非常に効果的であったことが分かる。


そして昔の日本に汲み取り式のトイレが設置されていたのは、人の糞尿には利用価値があるということをちゃんと分かっていたからなのだ・・・・・・。


このため当時の日本では、農家ではない家に、農家の人が糞尿をもらいに来ることもあったそうだ。
そして農家の人は汲み取りをさせてもらう代わりに、畑で採れた野菜を置いて行ってくれたりもしたそうだ。


それにしても、よ〜く考えてみると、自分のうんこを差し出して、その代わりに野菜をもらえるなんて、なんともすごいシステムである。


現在では本来捨てるようなものを回収してもらい、その代わりに物がもらえるシステムといったら、古新聞の回収ぐらいだろうか。


でも、古新聞の回収は、所定の紙袋に入れた古新聞を一束出しておいても、せいぜいトイレットペーパー1個もらえるのがいいところだ。
そう考えると、当時の農家さんは、大盤振る舞いと言ってもよかったのかもしれない・・・・・・。


このように昔の日本では、人の糞尿は農作物を育てるのになくてはならないもので、恵みをもたらす大切なものと考えられていた。


だから不浄な場所と思われがちなトイレも、逆に神聖な場所であると考えて、「厠神(かわやがみ)」が祀られたりもしたのである。
ちなみに厠神とはいわゆるトイレの神様のことである。


「みっちゃんみちみちうんこたれて〜、紙がないから手で拭いて〜、もったいないからなめちゃった(食べちゃった)」


もはや説明するまでもないと思うが、この歌の最後のフレーズ、「もったいないからなめちゃった(食べちゃった)」の部分は、実際に「もったいないからなめちゃった(食べちゃった)」という訳ではなかったのだ。


人の糞尿が恵みをもたらす、神聖なものだった時代に、当時の日本人が持っていた価値観を、歌詞に込めて表現したものだったのである。


「みっちゃんみちみちうんこたれて〜」は、「子供が作ったバカバカしい歌」だとばかり思っていたが、こうして読み解いていくと、じつに奥の深い歴史ある歌であることが分かったのだった・・・・・・。