「ドラえもん」1巻の魅力

"ドラえもん"1巻の魅力分析

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▲私が小学生の頃に買った「ドラえもん第1巻」。作者名がまだ「藤子不二雄」になっている・・・・・・。


どんな漫画にも言えることだが、私はなぜか単行本第1巻に、妙に魅力を感じるところがある。
これは「これからいったいどんな物語が始まるのだろう」という、ワクワク感がそうさせているのかもしれない。
しかし、それよりも何よりも、単行本1巻、2巻あたりだと、キャラクターの頭身や体形、性格や話し方などが、まだ手探り状態で、きちんと定まっていないところが、個人的にはすごく好きだ。
「なんてマニアックな話題なんだろう」と思われるかもしれないが、単行本を10巻くらいまで読み進めてから、もう一度1巻を読み返してみると、「なんかいいな〜」とその魅力をきっと分かってもらえると思うのだ。


例えば「ドラえもん」の1巻の第1話、「未来の国からはるばると」を読み返してみると、ドラえもんの体形がなんだかちょっとおかしなことになっていることに気付かされる。
で、具体的にどこがどうおかしいのかというと、ドラえもんが全体的に妙に丸っこいのだ。
顔はボールのようにまんまるだし、腹はポッコリと出っ張っているし、しかも全体的に丸いせいか、結構な猫背に描かれていることが分かる。
これは私たちが普段見慣れているドラえもんと比べるとかなり違和感がある・・・・・・。


しかし、よくよく見てみると、この第1話のドラえもんは不思議と魅力的で、「なんかいい」のである。
そしてそう感じているのは、どうやら私だけではなかったようで、この第1話の初登場シーンのドラえもんは、過去に何度かフィギュア化されて、実際に発売もされている。
これについては長くなるので、また別の機会に詳しく書いてみたいと思っている・・・・・・。


単行本1巻の頃は、ドラえもんの世界観と言うか、細かな設定の部分も、まだしっかりとしたものが出来ていなかったようだ。
例えば第1話は正月と言う設定で、部屋にはのび太が食べていた焼き餅が、皿に入って置かれている。
そしてそれを見つけたドラえもんは、「うまいもんだなあ」と焼き餅をパクパクと全て平らげてしまい、空になった皿まで綺麗に舐めている。
じつはこのシーンは、アニメ版では焼き餅から、ドラえもんの好物のどら焼きに変更になっている。
きっと連載開始当初は、ドラえもんの好物は「ドラ」つながりで、「どら焼き」という設定がまだ出来ていなかったのだろう・・・・・・。


また第1話では、しずかちゃんがジャイアンの妹のジャイ子と、羽根つきをして遊んでいるのだが、しずかちゃんがジャイ子と遊んでいるところなんて、2巻以降は全く見なくなる。
この時、しずかちゃんはいったい何を血迷って、ジャイ子となど遊んでいたのか・・・・・・。


そして第1話ではドラえもんの秘密道具のタケコプターが早くも登場するのだが、この時ドラえもんはタケコプターのことを、なんと「ヘリトンボ」と呼んでいるのだ。
しかもそのヘリトンボ(タケコプター)を頭にではなく、背中に付けて飛んでいるのである。
そしてヘリトンボ(タケコプター)を背中に付けて飛んでいる姿もまた、2巻以降では全く見なくなる光景なのである・・・・・・。


じつは当初ドラえもんは、複数の学年誌で同時に連載がスタートしている。
同時期に発売になる別々の雑誌で、全く同じ内容の漫画を載せる訳にもいかず、少しずつ内容を変えて掲載していたというから、きっと当時の作者の苦労は計り知れないものがあったと思う・・・・・・。


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▲背表紙を開くと初版本だったことが分かる。そして定価320円、時代を感じずにはいられない・・・・・・。


そしてここで注目したいのは、「複数の学年誌で同時に連載をスタート」、そして「少しずつ内容を変えていた」という部分で、これは言い方を変えるなら、「ドラえもんには第1話が複数存在する」という意味にもなって来る。
じつはこれまで単行本1巻に掲載されていた第1話は、先にご紹介した「未来の国からはるばると」だけだったのだが、2019年11月27日に6種類の「幻の第1話」を収録した単行本0巻が発売になり、その全貌がついに明らかになったのだ・・・・・・。


そしてこの単行本0巻を見ると、1巻に収録されている第1話、「未来の国からはるばると」以上に、ドラえもんの設定が現在とはかなり違っていることに気付かされるのだ。
まず0巻に収録されている作品は、雑誌連載時のカラーページもそのまま再現されていて、よく見るとドラえもんのカラーリングが、現在とはかなり違っていることに気付かされる。


何が違うのかと言うと、ドラえもんの手足の色が白ではなく、なんと肌色をしているのだ。
カラーページのドラえもんは、この手足の肌色がかなり目立ち、なんだかとっても違和感がある。


そしてもう一つ、ドラえもんの尻尾の色がなぜか青いのだ。
一瞬、「彩色ミスなのでは?」と思ってしまう。
ドラえもんの尻尾はとても小さくて、もともとそれほど目立つパーツではないと思うのだが、「ドラえもんの尻尾は赤いもの」という常識がすでに頭の中に出来上がっているため、こちらもかなりの違和感として感じられる。


また現在ではドラえもんの尻尾は電源スイッチのような設定になっていて、尻尾を引っ張ると、ドラえもんは全ての機能が停止する仕組みになっている。
ところが0巻収録の各1話では、ドラえもんは自分で尻尾を引っ張って姿を消す(透明になる)というイリュージョンをやってのけているのだ。
もちろん透明になるだけで、電源が落ちるようなことはない・・・・・・。


またドラえもんの行動にも驚かされる。
ドラえもんが慌てて外に飛び出して行くシーンでは、ドラえもんはなんとネコのように四つ脚で駆け出して行くのだ。
「ネコ型ロボット」というくらいだから、もしかしたらこれがドラえもんの本来の姿なのかもしれない。
そしてこれらのドラえもんの行動も1巻以降では全く見られなくなるのである・・・・・・。


じつは0巻収録の作品の中には、単行本1巻の第1話、「未来の国からはるばると」も収録されている。
一見、全く同じ作品に見えるのだが、じつは0巻収録のものはオリジナル版で、タイトルも「ドラえもんあらわれるの巻」となっている。
調べて見ると、単行本1巻に収録されている第1話は、単行本用に加筆し、再構成されたものなのだそう。
0巻と1巻を見比べて読んでみるのもまた楽しいと思う・・・・・・。


余談だが私が子供の頃に、近所の書店で購入した「ドラえもん第1巻」は、今でも我が家の本棚の片隅にひっそりと納まっている。
そしてそのドラえもん1巻を取り出して見てみると、「昭和49年8月1日初版第1刷発行、昭和56年3月30日第70刷発行」とある。
そして「定価320円」・・・・・・。
時代を感じずにはいられない・・・・・・。

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