部屋に飾られている懐かしい物

授業でつくった"置物"の数々

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▲学生の頃、技術家庭の授業で作った真鍮製の文鎮。実物はややくすんだ金の延べ棒のような色をしている。


我が家には部屋の所々に懐かしい品物が置かれている。
それらの品物は一体いつ頃そこに置かれたものなのか、そしてなぜそこに置こうと思ったのか、置いた本人がすっかり忘れてしまうくらい、ずっと前から当たり前のようにそこに置かれている。


こうしてわざわざ目立つ場所に置いてあるところを見ると、恐らくそれを置いた当時の心情としては、そこに「飾ろう」と思って置いたのだと思う。
しかし、今となっては、そんな貧相なものを、なぜ「飾ろう」などと思ったのか、全くもって理解出来ない。
そしてよく考えてみれば、それを数十年間その場所に置きっぱなしにしていることも、我ながら不思議でならないのだ・・・・・・。


例えばテレビ台の上に、テレビといっしょに置かれているのは真鍮製の文鎮である。
これは確か私が中学生の頃に、技術家庭の授業で、真鍮の丸い棒を削って作ったものだ。
一般に文鎮と言うと、銀色をしたシンプルな棒状の物を想像すると思うのだが、この文鎮は真鍮製なので、くすんだような色合いの金色をしている。
しかも一般的な文鎮と違って、凹凸のあるデザインになっているため、一見なにに使う物なのかよく分からない。


このためたまにお客さんが来たりすると、「これなんですか?」と聞かれることがある。
「文鎮ですよ」と答えると、「へ〜、文鎮!変わった文鎮ですねぇ」と、妙に感心されたりする。
しかもテレビ台の上などという目立つ場所に置かれているため、「歴史ある珍しい一品」と勘違いされ、「古い時代のものなのでしょう?」と聞かれることがある。


もちろん私が中学生の時に作ったものなので、昭和の頃に作られたものということになり、「古い物」であることは間違いない。
しかし、自分で作った物を飾っているとはちょっと言いづらく、なんと答えたらいいものか迷っていると、困ったことに客が、「珍しい物なんでしょ?」と更に食いついて来る。
まぁ、私が中学生の頃に作った文鎮なので、他に同じ物は一つとなく、そういう意味では珍しいと言えば珍しいのだが・・・・・・。


いつだったか、骨董品に興味があるという客が、「ぜひ写真を撮らせてほしい」などと言い出し、焦ったことがあった。
ホームページにその画像を載せられたりしたら困るので、慌ててそれは止めたのだが、その客は見るからに残念そうな顔をして帰って行った。
「骨董品に興味はあるが見る目がない」とは、こういう人のことを言うのだろう・・・・・・。


我が家の本棚の片隅には、オルゴールが一つ置かれている。
確かこれも中学生の頃に、技術家庭の授業で作った物だと記憶している。
一般的にオルゴールと言うと、丸みを帯びた滑らかな形の箱を想像すると思う。
しかし、うちの本棚に置かれているオルゴールは、カクカクとした見るからに「木箱」という形の物で、パッと見ただけでは、これがいったい何なのかは、よく分からないと言う人がほとんどだと思う。


ところでこのオルゴール、もともとはただの一枚の木の板だった。
そしてその木の板を細かく切って、それぞれのパーツを組み上げて、オルゴールの形にしていくのだが、ただ単に木のパーツを組んでそれで終わりという訳ではない。


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▲神秘的なオーラを放つオルゴール。これも技術家庭の授業で作ったものだ。


まずオルゴールの形に板を組み、彫刻刀で表面に模様を彫り込んで行く。
この模様も自分でデザインしたのだが、トンボと唐草模様を掛け合わせたような、謎の掘り込みがされていることが分かる。
当時どんな心境でこの模様をデザインしたのかは、今となっては全く思い出せないのだが、なんだかエジプトの王族の墓の壁画にありそうな、神秘的な模様に仕上がっている。


そしてその後、オルゴールの表面を茶色に彩色をして、それを一度乾かし、更にその上からニスを塗って完成となる。
じつはこのオルゴール、貧相な見た目とは違って、けっこう手の込んだものなのである。
とは言うものの、子供が彩色したものなので、色にはムラがあって、とても褒められた仕上がりではないのだが、それが逆に「古めかしい木箱感」を醸し出していたりするから驚きである。
技術の先生の反応も決して悪くなく、「なんだかタロットカードでも出て来そうな箱だな」と言われたのを覚えている。


神秘的な模様と古めかしい木箱感が、「気軽に触れてはいけない物」のように感じられるのか、うちに来た客は明らかにこのオルゴールをガン見していたのに、「この箱はなに?」と聞いて来た者は、今のところ一人もいない。


ところで先日、このオルゴールを久しぶりに開けてみたのだが、中には「ときわ相互銀行」と書かれたポケットティッシュが数個入っていた。
「ときわ相互銀行ってなんだよ」と思っていたところ、どうやら現在の東日本銀行のことらしい。
オルゴールだけではなく、中身の方も歴史を感じられる物が入っていたという訳だ・・・・・・。


我が家には私が小学生の頃に買ってもらった大きな学習机が、まだそっくりそのまま残っている。
きっとほとんど人は、人生のどこかのタイミングで、学習机は廃棄してしまっているのではないだろうか。
学習机というのは大きなものが多く、とにかく場所を取るので、使わなくなればそれも仕方がないことなのかもしれない。


現在、我が家の学習机は、私の趣味のカメラ関連の機材や、仕事の資料などの置き場所になっている。
そして机には棚が付いているのだが、棚の中には白い大きな鳥の置物がポツリと置かれている。
じつはこれも学生の頃に、美術の授業で作った物だ。


じつはこの鳥の置物は、もともとは大きな軽石のブロックで、それをコツコツと削って、鳥の形に仕上げたものだ。
一応、スズメのような小鳥をイメージして作ったのだが、小鳥というにはあまりにも大きく、大人が両手の平をくっつけて差し出しても、はみ出すほどの大きさは十分にある。


ちなみに小鳥の置物とは言うものの、辛うじて小鳥の形をしているというだけで、羽の形状や模様、足の形などは、残念ながら全く再現されていない。
また彩色もされていないので、見た目は「小鳥のシルエットをした軽石」である。
小鳥寄りの軽石ならまだいいのだが、軽石寄りの小鳥であるため、思わず風呂場へ持って行き、踵の角質を削り落としたくなって来る。


しかし、そんなことをしたら、まず間違いなく、小鳥の頭がポッキリと折れてしまうだろう。
素材が軽石なので非常にもろく、じつは美術の授業で、軽石を小鳥の形に削っている時にも、何度か頭をそぎ落としてしまっているのだ。
だから完成後もこの小鳥の置物には、出来るだけ手を触れないようにして、今もこうして学習机の上で私たち家族の生活を見守ってもらっているのである・・・・・・。