「謎フレーズ探偵」エッチスケッチワンタッチ

"エッチスケッチ"言葉の由来

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私が子供の頃、「エッチスケッチワンタッチ」という、まるで呪文のような謎の言葉が流行っていたことがあった。
いったい誰が言い出したのかは定かではないが、自然発生的に突然言われ始め、短期間のうちに一気に広まって行った言葉だったように思う。
いわゆる流行り言葉というのは、いずれ自然消滅して行くものだが、この言葉は流行りとはちょっと違っていたようで、子供たちの間では日常的に使われていた言葉だったようだ。


で、この「エッチスケッチワンタッチ」を、どんな風に使っていたのかというと、鬼ごっこをする時に、「タッチ!」という代わりに、「エッチスケッチワンタッチ!」と言ってタッチをしたり、友達をからかったりする時にもよく使われていた。
ただ単に「タッチ」の代わりに使う時には、「エッチスケッチワンタッチ」という短いフレーズだけだったが、友達をからかったりする時には、もっと長い「はやし言葉」のようになっていた。
そしてその「エッチスケッチワンタッチ」に続くフレーズには、いわゆる小学生が大好きな言葉の数々が並んでいたのである・・・・・・。


例えば友達をからかう時には、「エッチスケッチワンタッチ、あなたのちんちん何センチ?」と言ったりする。
「あなたのちんちん何センチ?」と聞いてはいるのだが、実際は友達のちんちんが何センチだろうと、別にそんなことはどうでもいいことである。
逆に本当に気になっているのならちょっと問題である。


そして「あなたのちんちん何センチ?」と聞かれたところで、「〇〇センチ!」と即答出来るやつなんて絶対にいなかったし、「あ〜、煩わしい。早くあっちに行けよ」と思っているやつが大半だったと思う。
このように、「エッチスケッチワンタッチ」は、言葉そのものには意味はなく、語呂合わせの言葉遊びのようなもので、ただ単に友達をからかう時に多用されるフレーズだったのだ。


また、トイレから帰って来た友達を目ざとく見つけると、「エッチスケッチワンタッチ、トイレに入ってうんちっち!」とからかったりするやつもいた。
「お尻の周りはうんちっち!」というバージョンもあったように思う。


私が小学生の頃は、学校のトイレでうんちをするということは、「とてつもなく恥ずかしい行為」と思われていて、トイレのブース(個室)に入るということは、もはや自殺行為に近いことだった。
このためうんこネタでいじられることだけは、いくら「はやし言葉」だと分かっていても、必死で否定する者が多かったものだ・・・・・・。


「エッチスケッチワンタッチ」で女子をからかう者もいた。
女子をからかう時には、それ専用のフレーズがあって、「エッチスケッチワンタッチ、あなたのお尻は何センチ?」とか、「あなたのおっぱい何センチ?」などがあった。
また、「トイレに入ってうんちっち」は男女共通で使われていたように思う。


今だったら、たとえ小学生同士でも、「セクハラ〜!」とか言われそうだが、当時はそんな「便利な言葉」はまだなかったので、女子に面と向かって、堂々と発言していたもである。


また、女子の背後からそっと忍び寄り、「エッチスケッチワンタッチ!」と言って、肩や背中にタッチして驚かしている者もいた。
別に鬼ごっこをしている訳でもないのに、なんのための「タッチ」なのかさっぱり分からない。
まぁ、強いて言うなら、女子に触れる口実だったのだろう。
それこそ今だったら、「セクハラ〜」である・・・・・・。


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ところで調べて見ると、「エッチスケッチワンタッチ」は、1970年代頃から小学生の間で流行り出した言葉のようである。
先ほど「言葉そのものには意味はない」と書いたのだが、単語一つ一つには、言うまでもなく意味はある。
そしてどうやら、この「エッチスケッチワンタッチ」という言葉は、当初は「スケッチ」の部分が、「スケベ」という言葉だったらしいのだ。


スケッチの部分をスケベに置き換えて意味を考えてみると、「エッチでスケベな野郎が、女性にワンタッチをする」という、非常にシンプルで分かりやすい意味が浮かび上がって来るのだが、もしかしてこれって、元はセクハラ用語だったということなのだろうか。
もしそうだとすると、当時女子にワンタッチしていた男子たちは、正しい使い方をしていたということになるだろう・・・・・・。


そしていつしか、「スケベ」を「スケッチ」と言い換えて、「3、4、5」の文字数にして語呂を合わせたり、「エッチスケッチワンタッチ」と韻を踏んだりして、言葉遊びの性質が強くなって行き、最終的には当時の形に落ち着いたということのようだ。


ところで最後の部分の「ワンタッチ」という言葉についてだが、これについては当初は、「1回タッチをする」という文字通りの意味ではなかったようである。
では、いったいどこから出て来た言葉なのかというと、じつはその当時、江崎グリコから「ワンタッチカレー」というカレールーが発売になり、話題になっていて、どうもここから拝借して来たワードのようなのだ。


ワンタッチカレーは1960年に、江崎グリコが発売したカレールーで、日本で初めて板状の形で発売されたカレールーだったようだ。
ワンタッチカレーが発売になる以前のカレールーは、石鹸のような形をした、とても硬いもので、それを包丁で削り落としながら使っていたのだという。


江崎グリコはお菓子メーカーということもあり、板チョコの製造技術を応用して、カレールーをブロックごとに割って、鍋に投入出来るようにした。
ワンタッチカレーというネーミングは、「パキッ」とルーを割って、鍋に「ポン」と入れるだけという、調理のお手軽さを謳ったものだったようだ。
そして現在では当たり前になっている市販のカレールーの形状は、このワンタッチカレーから始まったことになる訳だ。
ちなみにワンタッチカレーは1990年に販売終了となっている・・・・・・。


ところでこのワンタッチカレーは、私が小中学生の頃に、テレビCMを頻繁に流していた。
当初は榊原郁恵さんがCMをやっていたらしいのだが、私はそれはあまり記憶にない。
私が覚えているのは、松田聖子さんのCMからで、複数のバージョンが撮影されて、当時はテレビでけっこう頻繁に流されていたと思う。
ちょうど松田聖子さんが結婚をされた頃だったのか、「ミセス聖子のニューグリコカレー ♪」というフレーズが、いまでもはっきりと耳に残っている・・・・・・。


それにしても、「エッチスケッチワンタッチ」を現役で使っていた当時は、「ワンタッチ」がカレールーのことだなんて、これっぽっちも思っていなかった。
当時は文字通り、「1回タッチをする」という意味だと思って使っていた。
そしてワンタッチカレーについても、1960年から発売されていた歴史あるカレールーだなんて、ちっとも知らなかったし、日本初の板状のカレーということも知らなかった。


そして大人になってから、「エッチスケッチワンタッチ」と「ワンタッチカレー」に繋がりがあったことを初めて知って、非常に驚くことになったのである。
きっと、CMをやっていた聖子さんもびっくりであろう・・・・・・。

(画像上、日本の山野では立春の頃から咲き始めるマンサクの花。画像下、フユシャクのメスは翅が退化している)