伝統文化の風刺画で活写する近現代の英国宰相たちの実相

伝統文化の風刺画で活写する近現代の英国宰相たちの実相

『風刺画で読み解く イギリス宰相列伝 ウォルポールからメイジャーまで』
ケネス・ベイカー著(ミネルヴァ書房/3500円)

本書は、18世紀の英国で誕生した風刺画を皮切りに、1990年代のメイジャー首相時代までの夥(おびただ)しい数の風刺画を再録し、英国政治史を追うユニークなもの。

 もともと「首相」という公職は英国にはなかった。首相という通称が定着するようになったのは、1715年に陸軍長官ならびに財務相に任命されたウォルポールが、そう呼ばれるようになってからだという。今の英首相官邸(ダウニングストリート10番)も、元を辿(たど)れば財務相の公邸だったのだ。

 この首相の誕生と、風刺画が生まれた時代が同じなのは単なる偶然ではないだろう。「権力者を動揺させることができるのは、笑いである」という本書の文章から分かる通り、政治風刺は、議会政治の民主化が進み、マスメディアが発達し、一般有権者が政治に関心を募らせるようになって、庶民の文化として根付いていった。政治家を嗤(わら)いの対象とするのも、健全な政治のために必要なのだ。

 ピット、ディズレイリ、グラッドストン、チャーチルやサッチャーなど、日本人にも馴染(なじ)みのある首相も登場すれば、ロイド=ジョージやマクドナルドなど、重要な役割を果たしつつも、海外ではあまり名前を知られていない人物たちも登場する。時代ごとに区切られた各章は、数々の風刺画と共に、簡潔な政治史にもなっており、目で楽しみながら、併せて知識も増えていくのが面白い。

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