枕営業の女性起業家から ヤクザに雇われた地下ディーラーまで、 怪しげなベンチャーバブルの世界

バーカウンターで片肘をつき、黙々とグラスをかたむけるジャニーズ風のイケメン。その目はうつろで、心ここにあらずといった風だ。

「元大手証券会社のディーラーでね」

 有馬は息を殺して聞き入る。

「年収が1億を下らない辣腕だったけど、使い込みをやらかして全部パー」

 派手な遊びが高じて会社のカネに手をつけ、懲戒解雇を食らったのだという。

「そんなやつがどうしてここに?」

 会社を放り出されたにしてはスーツも靴も高級で、カネに詰まっている様子はない。

 これよ、これ、と富子はほおをすっと指先で裂く真似をする。有馬は声を潜めて問う。

「ヤクザがどうした」

 喰いつめたディーラーがヤクザに転身したのか? 富子は意味ありげな笑みを浮かべて返す。

「雇われてんのよ」

 はあ?

「だからさあ」周囲に警戒の目をやり、小声で続ける。

「いまどきのヤクザさん、暴対法だなんだで警察に締め上げられて、シノギに困ってるでしょ」

 たしかに。組の代紋入りの名刺を差し出しただけで脅迫罪に問われ、パクられるご時世だ。

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