「生命科学本の中で過去最高」…圧倒的な知性が書いた震えるほどの名著



 このような、「でかい話をすると見せかけて、分解しまくって、一部分を細かく突っつき始めるライフサイエンス本」にモヤモヤすることがある。「パソコンがなぜ複雑な計算をいとも簡単にこなすのか、知りたくありませんか? では今日はパソコンを支えているバッテリーのリチウム電池についてお教えしましょう」。うっせぇわと思う。

 結局、著者が詳しい話、演者がしゃべれる話をしているだけなんだよなあ、みたいな感覚。

 本当に知りたかったコアにたどり着く前に終わっちゃうよね、みたいな諦念。

 真の意味で生命科学を広く語る本なんて、めったに出会えない。

 でも、無理もないことかもしれない。とかく生命科学の裾野は広すぎる。学者、研究者、医療関係者、みんなが自分の両手に収まる範囲で分業して、せーので一斉にすったもんだしているのが現実だ。全貌を語れる人なんて、どこにいるというのか?

 ニヒルにあきらめていた矢先に、「WHAT IS LIFE?」などというクソデカタイトルの本を目にした私は、アーハイハイまたそういうやつね、と苦笑するほかなかった。「生命とは何か」とはこれまた巨大なテーゼをぶち上げたもんだなあ! 著者は英国の研究者ポール・ナース。どうせ、彼の十八番である酵母の話にどっかで結びつけて、それっぽく終わるんだろうな、なんて、実のところ、もう、完全に、飽き飽きしていた。予想は付いていた。期待なんてしていなかった。

 でも。

 本書は「生命とは何か」に向かって、幅広く、かつ、まっすぐに、知性豊かに迫る。頑なになっていた私の心が少しずつ開かれていく。

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