新日本酒紀行「タクシードライバー」

新日本酒紀行「タクシードライバー」

豪雪で蔵が倒壊し瓶詰め機とボイラーが損傷 Photo:Kikuzakarisyuzo

■被災を乗り越え、地元北上で酒蔵復活を目指す

 日本酒らしからぬ銘柄「タクシードライバー」の醸造元の喜久盛酒造は、岩手県北上市唯一の酒蔵だ。

「鑑評会の評価より焼き鳥屋のおやじに好かれる酒を」と3代目の祖父の提唱を、5代目の藤村卓也さんが継承する。

 卓也さんは元ゲームデザイナーでアマチュア格闘家という異色の経歴。2003年に先代の父が急逝し30歳で蔵を継いだ。

 日本酒を飲まない未開拓消費者へのアプローチを考え、銘柄とラベルにサブカルチャーを取り入れる。中身は至って真面目、全量岩手県産米で純米酒のみを醸す。

 喜久盛酒造の創業は1894年。最盛期は4500石で、醤油と味噌も製造していた。だが業績が低迷し、酒のみで200石ほどと激減。資金繰りが大変な中、卓也さんは個性派ラベルを次々と企画。酒を飲む人、飲まない人の心もつかみ、人気がじわじわと上昇する。

 さあ、これからというときに、11年の東日本大震災で蔵が被災。仕込み蔵が半壊し、各設備も大損傷、醸造不能に陥る。そのとき、隣の花巻市の酒蔵「白雲」の蔵元が急逝し遺族が廃業を決め、仕込み蔵を借りることになった。

 出荷作業を元の蔵で行い、いつか酒蔵復活と願い酒造りを続けてきたが、21年2月の福島県沖地震と豪雪で蔵の屋根が倒壊。ボイラーが壊れ、洗瓶と火入れ、出荷作業も不可能に。保険金は修復費用の4分の1以下しか下りず、再建は絶望的。だが卓也さんは諦めず、クラウドファンディングを立ち上げた。

 北上市に残る唯一の酒蔵の灯を絶対に消さないと支援を募る。

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