なぜタレブは『反脆弱性』を書いたのか? 唯一無二の本誕生秘話

リーマン・ショック、アラブの春、地震と津波、そして原発事故……。私たちは今、昨日までは「ありえない」と言われたことが、今日、現実のものとなる不確実な世界で生きることを強いられている。ではどうすれば、ランダムで、予測不能で、不透明で、物事を完璧に理解できない状況でも、不確実性を味方につけて、したたかに生き延びていくことができるのだろうか――。
サブプライムローンに端を発する金融危機を喝破し、ベストセラー『ブラック・スワン』で全世界に衝撃を与えた「知の巨人」タレブが、その「答え」を見つけた最高傑作『反脆弱性』から、「プロローグ」を順次公開していく連載第5回。自ら集大成と語る『反脆弱性』で、タレブは何を伝えたかったのか。その誕生秘話に迫る。

■IV.本書

 反脆さという概念に行き着くまでの旅は、いってみれば非線形的だった。

 ある日、私は突然、それまで厳密な定義のなかった「脆さ」という概念を、「変動性を好まないもの」として表現できることに気づいた。そして、「変動性を好まないもの」はランダム性、不確実性、無秩序、間違い、ストレスなどを好まない。脆いものを思い浮かべてほしい。たとえば、居間にあるガラスの写真立て、テレビ、食器棚の磁器など、何でもいい。「脆い」と形容されるものは、安定的で、静かで、秩序的で、予測可能な環境に置いておきたいと思うものばかりだ。脆いものというのは、地震の発生やおてんばな姪の訪問で利益を得ることはまずない。

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