国と国はなぜ対立するのか? 戦争はなくせないのか?

平和学の父、ヨハン・ガルトゥングが日本人に向けて緊急出版した『日本人のための平和論』。その内容のエッセンスをキー・ワードによって紹介するのがこの連載の趣旨である。前2回は外交や安全保障の面からガルトゥング平和論を紹介したが、連載3回目は心理・文化・思想の面から紹介する。

世界にはなぜ戦争があるのか? なぜ隣国を警戒するのか? 国と国は過去の歴史を乗り越えることができるのか? 平和は実現可能なのか?

右派からは左派に見え、左派からは右派に見えることがある、ガルトゥング平和論の内側をのぞいてみよう。(構成・御立英史)

■ロシアを恐れるノルウェー人、中国を恐れる日本人

隣国を恐れる心理を、ガルトゥングはロシアを恐れるノルウェー人の例を使って説明する。ヴァイキングの国ノルウェーは、西暦950年頃、隣国ロシアに攻め込み、一地方を征服した。それから千年を超える年月が経ち、ノルウェーでは歴史家以外だれもそんな事実を知らなくなっているというのに、ノルウェー人はいまでも、いつかロシア人が復讐してくるのではないかと恐れているというのだ。

ノルウェー人が大昔に東の巨人ロシアに行ったことで感じている恐れと、日本人が西の巨人中国に行ったことで感じている恐れには、多くの点で共通点がある。「私たちは彼らを攻撃したことがある。彼らは報復を計画しているにちがいない。ゆえに彼らは危険だ」。そのような感情をパラノイア(偏執症)と言う。

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