歴史や文化を読み解き実践するエリアのブランディング

歴史や文化を読み解き実践するエリアのブランディング

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減価償却という考えから脱却して建物に解体制限期間を設け、地域の「らしさ」を活かした長く住める、遊べる、働ける家・街つくりをすべきだ。「家と街―100年後の街つくり―」の著者である的場敏行・株式会社NENGO代表取締役社長が、長期的な視点に立脚したこれからの家つくり、街つくりについて3回に渡って提言する連載の第2回は、家、街つくりのブランディング戦略について見ていく。

■いわゆる“ドヤ街”をセクシーで「発酵する」街へと再生する試み

 連載の第一回でも述べましたが、一戸の戸建てであれ、一棟の商業施設であれ、あるいはマンションや戸建て群を新しく建てる試みであれ、エリア・ブランディングの基本は、土地ごとの気候・風土・歴史・文化を読み解くことから始まります。得られた事実は、物件のコンセプトや設計・デザインに落とし込んでいきます。

 川崎市日進町の事例をご紹介します。当時築48年のビル(2棟のビルと倉庫)を、私たちでほぼ一棟丸ごと大規模リノベーションしたものです。日進町は、高度経済成長期にはいわゆるドヤ街と呼ばれた街で、日雇い労働者たちの集う場でした。風俗店街やラブホテル街も近く、ともすれば「コワイ、汚い」といったイメージが先行しがちです。

 しかし風土や歴史、文化を振り返っていくと、この一帯は東海道でも有数の活気あふれる宿場町であったことがわかります。風俗店街も、江戸時代から続くいわば伝統産業でもある。そこで、オーナーさんとも相談し「東海道の宿場町だった川崎を世界の宿場町にしよう。“スケベな街”をセクシーな街にしよう」というコンセプトを設けました。

 企画段階からオーナーさんとも一緒に方向性を考えている中で、強い意向もあって、途中からは「発酵しよう!」というコンセプトも加わりました。発酵とは、生まれ変わる物件に集まる人たちがみんなで化学反応を起こして、世界に面白いことを発信していこう、といった意味合いです。

 リノベーションがスタートしてからは、キーとなるテナント集めにも奔走します。この案件の場合は、むしろオーナーが私たち以上に積極的で、地元ゆかりのバスケットボール選手を引き合わせてくれたうえに、倉庫部分を「バスケットボールを中心としたスポーツと各種イベントを行える複合コートにしてはどうか」と提案いただきました。周辺には、バスケットボールを気軽に楽しめる施設はほとんどないこともわかり、成算があると踏みました。

 取り壊しも検討されたおんぼろの倉庫が、まさにコンセプトにぴったりの複合コートとして生まれ変わりました。また、スポーツを楽しみに来た地元やその他の人々が、ビル内のカフェやシェアオフィスに集い、人々の交流が生まれるという良い作用も生み出しています。

 他にも、文字通り「発酵!」を具現化させた地ビールの製造所や、木造版の3Dプリンタを販売するデザイン事務所、女子プロレス団体(途中退店)、シェアハウス等が入居。取り壊されてもおかしくなかったおんぼろのビルは、大規模リノベで蘇ったのです。

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