過去に直視を避けてきた現実 欧州リベラリズムの末期症状

過去に直視を避けてきた現実 欧州リベラリズムの末期症状

『西洋の自死 移民・アイデンティティ・イスラム』
ダグラス・マレー 著
(東洋経済新報社/2800円)

現在、安倍晋三首相の主導により「出入国管理法(出入国管理及び難民認定法)」の改正が進む。外国人が就労する際の新たな在留資格に「特定技能」というカテゴリーが追加される。今後5年間で、最大34万人を受け入れるという。

 この法案の中身や是非については、日本のメディアではあまり話題にならなかったが、急激な移民の受け入れを進める政策は、日本社会にどのような変化をもたらすのか。そのような疑問に、一つの悲劇的なシナリオを示してくれるのが、今回紹介する本書だ。

 著者は、英国の保守系政治雑誌である「ザ・スペクテーター」誌の若い記者兼編集者であり、原著は世界各国でベストセラーになっている。本書の特色は3点ある。

 まず一つ目が、欧州大陸全域で極端な移民受け入れ政策を進めるリベラル派の政治家や知識人たちの「闇」が手に取るように分かることである。本書には、「多文化主義」を掲げたドイツのメルケル首相や、大量の移民を受け入れた英国のブレア元首相など、その実例が次々に出てくる。欧州には「地獄への道には善意が敷き詰められている」という格言があるが、欧州の人々のあまり深く考えない「善意」によって、いかに現実が歪(ゆが)められているかを痛感する。

 二つ目は、欧州人が抱える罪悪感を率直に描いた点だ。中国からの大量移民により、政治が影響を受けていることを告発した『サイレント・インベイジョン』という本が豪州(オーストラリア)で爆発的に売れた。

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