東西で異なる「見るなの座敷」の結末??「あわれの心性」による完全美

東西で異なる「見るなの座敷」の結末??「あわれの心性」による完全美

男女の軌跡(「うぐいすの里」) (河合隼雄『昔話と日本人の心』図1をもとに作成)

日本におけるユング心理学の第一人者である臨床心理学者・河合隼雄は『昔話と日本人の心』で、日本人の心のあり方を独自の視点で読み解きました。数ある昔話の中から、著者が最初に選んだのは「うぐいすの里」の物語です。ディテールの異なる類話が全国各地で採取されていますが、ここでは岩手県遠野地方に伝わる話を取り上げています。京都大学教授・臨床心理学者の河合俊雄(かわい・としお)さんが、隼雄による物語の解釈をわかりやすく説明します。




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物語は、若い樵夫(きこり)が森の中で立派な館を見つけるシーンから始まります。あるはずのない館で彼が出会ったのは、一人の美しい女性でした。彼女は彼に留守を頼み、彼女がいない間、奥の座敷を覗いてくれるなと言い残して出かけます。昔話によくみられる「見るなの座敷」の物語です。



彼は「見るな」の禁を破り、その館に美しい調度をしつらえた座敷がいくつもあることを知ります。そして、花の香りに満ちた七つ目の座敷で鳥の卵を三つ見つけ、これを誤って割ってしまいます。そこに女性が戻ってきて、「あなたはわたしの三人の娘を殺してしまいました。娘が恋しい、ほほほけきょ」と恨めしそうに泣き崩れ、彼女は一羽のうぐいすとなって飛び去っていく─というお話です。

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