百人一首はオールスター総出演のベストアルバム

歌舞伎演目の現代劇化を試みる劇団「木ノ下歌舞伎」の主宰・木ノ下 裕一(きのした・ゆういち)さんが、古典に親しむようになったきっかけは百人一首の蝉丸(せみまる)の札でした。




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ぼくが百人一首に興味をもったのは小学校低学年ごろのことです。多くの人がそうだと思いますが、最初はかるた遊びから入りました。とはいっても、頑張って和歌を暗記して、他人よりたくさん札を取ろう、といったような殊勝(しゅしょう)な動機ではなく、もっぱら絵札(読み札)を使った「坊主めくり」で遊んでいたのです。



坊主めくりをしていると、気になる人物が浮上してきます。それが蝉丸です。他の僧侶(そうりょ)たちは頭を丸めているのが絵柄からもわかりますが、蝉丸だけは頭巾を被(かぶ)っている。僧侶であれば、めくった人が持ち札を全部没収されることになるので、この判断は重要なのですが、蝉丸を僧侶とみなすか、貴族や武士のような一般男性とみなすか、見解が分かれるところで、相当難しい。ゲーム中にケンカになるのは、だいたい蝉丸が出たときでした。



そんなわけで、蝉丸の札には他の札にはないインパクトと、どこか謎めいた雰囲気がありました。

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