マシュウの変化に見る深いヒューマニズム

自分を引き取ってくれるはずだったマシュウとマリラのクスバート兄妹が、本来望んでいたのは男の子だった……。11歳の少女・アンは、「マシュウ、それだれなの?」というマリラの問いで自分が“招かれざる客”であることを知り、激しく泣きじゃくります。そんなアンを見て、優柔不断でただびくびくと困惑するだけだったマシュウの心に変化が訪れます。脳科学者・作家・ブロードキャスターの茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)さんは、ここに全編を通しての重要かつ感動的な転換がある、と指摘します。




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出された食事にもろくに手をつけないまま、アンは急遽用意された二階の切妻の部屋で泣きながら眠ります。マリラは、おおごとになってしまった事態に腹を立てながら「あの子を孤児院へかえさなくちゃならないからね」と言いますが、これに対し、マシュウが「あんなに、ここにいたがるものを送りかえすのは、因業(いんごう)というものじゃないか」と言います。この場面は非常におもしろいところです。



グリン・ゲイブルスを実質的に仕切っているのはマリラで、マシュウも、アンを引き取って一緒に暮らそうと思って彼女を連れ帰ってきたわけではありません。しかし、マシュウのなかに変化が起こった。

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