本が燃やされるディストピアはいかに誕生したか 『華氏451度』執筆の時代背景

本が燃やされるディストピアはいかに誕生したか 『華氏451度』執筆の時代背景

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アメリカのSF/ファンタジー作家レイ・ブラッドベリ。その代表作である『華氏451度』で描かれるのは、本を読むこと、本を所有することを禁じられた近未来社会です。しかし、ブラッドベリはこのディストピア小説をつうじて「いまと変わらない未来」を描こうとしたと名古屋大学大学院情報学研究科教授の戸田山和久(とだやま・かずひさ)さんは指摘します。それは一体どういうことなのか。戸田山さんがこの作品が執筆された時代背景を解説します。




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\r\n■作品執筆の時代背景\r\n


この小説で描かれる「近未来社会」は、小説が執筆された1950年代のパロディだといえます。では、1950年代とはどのような時代だったのでしょうか。



四つの特徴を挙げることができるでしょう。一つは、ファシズムの記憶がまだ生々しい時代だということ。1930年代、ナチスはマルクス、フロイト、ブレヒトなど「非ドイツ的」とみなした著者たちの作品を焼く「焚書」を組織的に行っていました。絵画などの芸術作品も破壊しました。第二次世界大戦直後のアメリカには、ナチスと日本のファシズムを駆逐した世界のリーダーという自信に満ちた自己像がありました。

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