英雄的な老い、ボーヴォワール自身の老い

英雄的な老い、ボーヴォワール自身の老い

英雄的な老い、ボーヴォワール自身の老いの画像

『老い』の中で、ボーヴォワールは古今東西の知識人の実名を挙げて彼らの老いについて叙述しています。作家や学者などの知識職業人に対し辛辣な批評を繰り広げたボーヴォワールですが、中にはポジティブな記述も見られます。社会学者で、東京大学名誉教授の上野千鶴子(うえの・ちづこ)さんが、例を挙げて解説してくれました。




* * *




ボーヴォワールが「ある種の老人には、なにかしら不屈なもの、さらには英雄的でさえあるものが存在する」と書いて取り上げているのが、哲学者のラッセルです。


一生をつうじて危険をおかすことをためらわなかった人で、その大胆さが晩年になって一段と光輝をます場合もしばしばある。バートランド・ラッセルは若いころから頑固で勇敢だったが、一九六一年に彼が八九歳のときほどそれがセンセーショナルな形で示されたことはなかった。核兵器反対の「百人委員会」のメンバーであった彼は大衆に呼びかけて非暴力デモを行ない、当局の禁止にもかかわらず他の人びととともに地べたにすわりこんだ。


日本でも、作家の瀬戸内寂聴(じゃくちょう)が89歳で原発再稼働に反対するハンガーストライキに参加しました。福島の原発事故のときも、団塊(だんかい)世代の呼びかけで60歳以上で決死隊を組織しようという動きがありました。

1 2 3 4 次へ

関連記事(外部サイト)