葡萄を感じる

葡萄(ぶどう)は秋の季題の一つです。「いるか句会」「たんぽぽ句会」主宰の堀本裕樹(ほりもと・ゆうき)さんが、葡萄を詠んだ句を紹介します。




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葡萄を一句にするには、お店で買ってきた葡萄を詠(よ)むか、または葡萄狩りのときの経験をもとに詠むか、一般的にはそのどちらかでしょう。もちろん、卓上において葡萄のイメージを詩的に高めて詠むのもいいでしょう。



葡萄うるはしまだ一粒を損そこなはず
高浜虚子(たかはま・きょし)


亀甲(きっこう)の粒ぎつしりと黒葡萄
川端茅舎(かわばた・ぼうしゃ)


二句ともに完全なる葡萄のかたちを詠んでいます。



一句目は、葡萄を食べる前の状況でしょうか。皿に盛られた葡萄を食べる前に、「なんとこの房の完璧な、麗しいことよ」と思ったのです。そうして、今は完全なる状態の葡萄だが、これから一粒ずつ摘まんで食べるごとに、そのかたちが徐々に崩れていくことに思い及んでいるようです。



二句目は、完全なる葡萄のかたちを、「亀甲の粒ぎつしりと」で表しています。「亀甲」とは亀甲形のことで、亀の甲のように六角形の文様が上下左右に並んでいる状態です。



たしかに黒葡萄の一粒一粒が押し合うように並んだ様子は、亀の甲羅の文様に似ていますね。



作者は、その類似を発見して写生に活かしたのです。



■『NHK俳句』2016年9月号より

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