自分らしさをなくさずに──佐藤天彦名人、自らを語る

自分らしさをなくさずに──佐藤天彦名人、自らを語る

写真:河井邦彦

昨年度まで本誌にエッセイを連載していた佐藤天彦(さとう・あまひこ)名人。その後、初タイトルとして名人位を獲得。立場も大きく変わり、現在の心境について大いに語ってもらった。




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\r\n■趣味や価値観が個性になる\r\n


少年時代に通っていた福岡の道場が師匠の実家の2階にありました。当時、師匠は東京に住んでおり、帰省された際に何度か教えていただく機会に恵まれたのです。いちばん身近にいた棋士が中田功七段でした。



師匠は将棋も独特ですし、盤上以外でも美学を大事にされています。せこいことはせずに物事をはっきりと言われる方です。名人になって大山先生(康晴十五世名人)の孫弟子だということが取り上げられるようになりました。師匠の放任主義は大山先生から受け継がれたようです。とはいえ、要所要所で相談に乗ってくださり、いい距離感で見守ってくださいました。伸び伸びとやらせてもらえたので、本当にありがたかったです。



私は自分の将棋をバランス型だと思っていますが、ほかの棋士からは受けの棋風だと言われることが多いです。最近は攻め将棋の棋士が多く、こちらが受けに回る展開を余儀なくされることも少なくありません。必然的にバランス型の棋士は受け身に見られることが多いような気がします。



居飛車本格派と評していただく機会が多いのは大変うれしいのですが、悩みもあります。

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