近代文学の突き抜けた天才、宮沢賢治

2017年3月の『100分de名著』では、「宮沢賢治スペシャル」と題し、彼の残した作品を数多く取り上げています。指南役を務める日本大学芸術学部教授の山下聖美(やました・きよみ)さんは、宮沢賢治を近代文学における、ただ一人の「突き抜けた天才」と評します。




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今、文学の不人気が叫ばれています。



「文学なんかやって何になるの?」

「就職に不利なんじゃない?」



私の教え子の中にも、文学を専攻したいと言ったら親に反対されたという学生が少なからずいます。なかなか心に余裕のない時代になってきたなと感じます。



確かに、文学や芸術は勉強したところで頭がよくなるものではありませんし、体が丈夫になるわけでもない。ましてや出世や金儲けに役立つものでもありません。



では、そうであるにもかかわらず、なぜ昔から今日まで文学がずっと存在し続けているのか。



それは、文学が人間の心の問題、魂の問題に直結するものだからです。



人間は、役に立つことだけでなく無駄なこともやりたくなります。実際にやってしまっては法律で裁かれるようなこと、現世では決して許されないようなことも、実はやりたくなるのが人間です。取り返しのつかない過去の行為についての後悔や、どうしてもできないことに対する葛藤(かっとう)もあるでしょう。そうした人間の心の居場所はどこにあるのか。

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