宮沢賢治の童話を大人が読むことのおもしろさ

宮沢賢治の執筆スタイルは多くの作家のそれとは異なり、野外を歩き、メモを取りながら書いていたといいます。日本大学芸術学部教授の山下聖美(やました・きよみ)さんは、「頭の中で物語を構想して書くというよりは、自然の中を歩き、そこで感受したものをそのまま筆先から文字に変えて書いていた、とも言えるでしょう」と解説します。



怪しい風が吹くところから物語が始まる「注文の多い料理店」を例に、賢治の童話のおもしろさについて山下さんにお話を伺いました。




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\r\n■怪しい風が吹き、物語が始まる〜「注文の多い料理店」\r\n


賢治が作品に活かしたさまざまな自然のモチーフのうち、最も重要なものが「風」です。賢治の童話では、風が吹くとそこから物語が始まります。



童話集の表題作「注文の多い料理店」もその一つです。若い紳士二人が趣味の狩猟を楽しむため山に入りますが、成果を得られないまま道に迷います。案内人は消え、連れてきた二匹の犬は「あんまり山が物凄(ものすご)いので」という理由で「泡を吐いて死んで」しまいます。戻ろうとしても、どちらに行けばいいのかわからない。するとこんなことが起こります。


風がどうと吹いてきて、草はざわざわ、木の葉はかさかさ、木はごとんごとんと鳴りました。

「どうも腹が空いた。さつきから横つ腹が痛くてたまらないんだ。」

「ぼくもさうだ。

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