まるで痛快活劇のようなお経、『維摩経』

『維摩経(ゆいまぎょう)』というお経をご存じでしょうか。如来寺住職・相愛大学教授の釈徹宗(しゃく・てっしゅう)さんは、そのユニークさを「まるで痛快活劇を見ているかのようだ」と表現します。




* * *




『維摩経』と聞いても、よほど仏教に興味をもっている方を除けば、ピンとこないのではないでしょうか。早い時期に日本に伝わり、その後の日本仏教に多大な影響を与えた経典として、仏教界では重要なものととらえられています。しかし、その後の主流の仏教宗派の根本経典にならなかったこともあってでしょうか、一般の方たちにとっては意外に馴染みが薄いようです。ところが、実際に読んでみるとわかりますが、これほど面白い経典はなかなかありません。



十年ほど前に『維摩経』についての解説書を書かせていただく機会があり、全編の“超訳”に取り組んだことがあるのですが、訳しながらこのお経の面白さにどんどん引き込まれていきました。なぜなら、他の多くの経典は釈迦(しゃか)が教えを説き、それを弟子たちや菩薩たちが聴聞するスタイルで書かれているのに対して、『維摩経』は「維摩(ゆいま)」という在家仏教信者のおじいさんが教えを説くというユニークなお経だからです。



在家者が仏教を説くという形態も特徴的ですが、このおじいさんのキャラクターがとにかく強烈でした。彼は、お経の中で、それまでの仏教のスタンダードな教義や考え方を根底からことごとくひっくり返していくのです。

1 2 3 次へ

関連記事(外部サイト)