ジェイン・オースティンの作品に顕著なイギリス的特質

『100分de名著』2017年7月号では、英国の作家ジェイン・オースティンの代表作『高慢と偏見』を取り上げています。指南役を務める京都大学大学院教授の廣野由美子(ひろの・ゆみこ)さんに、オースティン作品の特徴についてうかがいました。




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ジェイン・オースティンは、母国イギリスで最も親しまれている作家のひとりです。イギリスの中央銀行であるイングランド銀行の発表によると、今年9月に発行予定の新十ポンド紙幣には、オースティンの没後200年を記念して、彼女の肖像画が使用されるとのこと。かつて日本の千円札に夏目漱石(そうせき)の肖像が、そして現在の五千円札に樋口一葉(いちよう)の肖像が使われているように、イギリス人にとってオースティンは、まさに国民的作家と言える存在なのです。



オースティンが国民的作家と呼ばれる所以(ゆえん)は、彼女の小説が、いわゆるイギリス的特質が顕著な文学であるからでしょう。では、「イギリス的特質」とは何でしょうか。それは、人間の性格の特徴や、日常における人間関係の洞察に重点を置き、対象から距離を隔てて客観的に、皮肉な笑いをこめて眺めるという風刺の精神があることだと思います。オースティンの作品は、まさにこのような精神で満ち溢れています。



今回取り上げるのは、オースティンの代表作『高慢と偏見』(原題Pride and Prejudice)です。

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