エリザベスのダーシーへの偏見はどのように生まれたのか

この出来事は、エリザベスがダーシーに対する「偏見」を、後々まで引きずるきっかけになっていくからです。



ではなぜ、エリザベスはダーシーに対して、ことさら強い偏見を抱いたのでしょうか。エリザベスの内には、もともとの自分からの上昇を目指す「成上り」としての意識が潜んでいます。一方、莫大な家伝の財産をもつダーシーは、「成上り」の対極にいる「本物」です。そういう人物から、エリザベスはある程度本当のことを言われてしまったわけです。彼女は知的で溌溂(はつらつ)とした魅力はあるけれども、長姉ジェインほどの美人でないことは、事実だからです。これは両親であるベネット夫妻の会話などから読み取れる情報とも合致します。ですから、「まあまあ」というダーシーの言葉は、当たっていると言えなくもありません。それが、かえって「成上り」としての彼女の本性を刺激し、〈スキーマ〉(※)が表面化して、「偏見」という形で攻撃性を帯びる形になった、というように分析することができるでしょう。



※人が成長するにつれて形成される、物事の根本的な捉え方や、信念の土台となるような考えのことを、精神医学の一領域である認知療法では〈スキーマ〉(schema)と呼ぶ。



■『NHK100分de名著 ジェイン・オースティン 高慢と偏見』より

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