文壇におけるオースティンの評価

今もなお、イギリスで最も親しまれている作家の1人であるジェイン・オースティン。彼女の小説は、同業者からどのような評価をされていたのでしょうか。京都大学大学院教授の廣野由美子(ひろの・ゆみこ)さんにお話を聞きました。




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オースティンが生まれた18世紀のイギリスでは、ジョン・ロックに始まる科学的経験主義の影響により、知覚をとおして世界を理解するうえで、自分の外側で起きたことの経験を詳細に説明することが重視されました。にもかかわらず、オースティンの小説世界では、そうした外的経験のディテールが大幅に省略されています。小説世界のこの制限性ゆえに、初期の批評家のなかには、オースティンを「女々(めめ)しい家庭的な世界に自らを閉ざそうとする小規模な作家」として軽視する向きもありました。彼女の小説は、ときに「茶の間小説(romance of the tea table)」と蔑称されることもあったようです。



しかし、こうした独特の制限性は、オースティン自身の確固たる芸術理念に支えられたものであり、まさにそれゆえに彼女は高く評価されてきたのです。この「制限性」、つまり「狭さ」をよしとするか否かによって、オースティンは、好き嫌いがはっきりと分かれる作家でもあります。



それぞれの代表者を、何人か挙げてみましょう。まず、オースティン嫌いの代表は、シャーロット・ブロンテ、マーク・トウェイン、D・H・ロレンスなど。

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