『ソラリス』の作家スタニスワフ・レムの“世界観”

『ソラリス』を著した作家スタニスワフ・レムは、第一次世界大戦と第二次世界大戦の間にあたる「戦間期」、1921年にポーランドで生まれました。



ポーランドは18世紀末の「ポーランド分割」で事実上消滅してしまいますが、第一次世界大戦が終結した1918年に独立を勝ち取ります。しかし第二次世界大戦が始まると、西からナチス・ドイツ、東からソ連が侵攻して、独立国としてのポーランドはまた消滅してしまいます。その間の短い独立期間が戦間期にあたります。



こうした世界情勢はレムにどのような影響を与えたのでしょうか? ロシア・東欧文学研究者で、東京大学教授の沼野充義さんが語ります。




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レムが生まれた町について具体的にお話ししましょう。この町の歴史を語り出すと相当時間がかかってしまうのですが、レムという特異な才能に大きな影響を与えていることでもありますので、町の名前の変遷に触れながら簡単に紹介したいと思います。



レムが生まれたのは、当時はポーランド領だったルヴフという町です。この町はポーランド分割時代はオーストリア領に組み込まれていましたが、1918年のポーランド独立とともにポーランド領になりました。レムが生まれた頃はポーランド語で「ルヴフ」と呼ばれていました。しかし、その後ナチス・ドイツに占領され、さらにはソ連赤軍に「解放」されてソ連領に組み込まれ、ロシア語の「リヴォフ」という名前で一般に知られるようになりました。

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