柳 時熏九段、天元戦挑戦手合で放った「渾身の一手」

「まだまだ弱いんだ」と思い知らされることの繰り返しでした。



3年目あたりから少し成績がよくなって、皆さんに覚えてもらえるようになりました。そのころは、昔、囲碁年鑑を見て一生懸命棋譜を並べていた方たちと戦っているというのが不思議で、自分が漫画の世界に入ったみたいな感じでした(笑)。そして6年目に、いきなり天元戦の挑戦者になってしまったのですね。当時、皆さんには強い強いと言われていたのですが、今振り返るとまだそんなに強くはなかった。ただちょっと勢いがあって、挑戦者になれたのかなと思います。



相手は林海峰先生です。人格も、碁に対する姿勢もすばらしく、学べるところがたくさんある先生で、当時も今も尊敬しています。僕が林先生の碁の強さを語るのはおこがましいのですが、非常に打つ手の幅が広いところでしょうか。「こういうふうに打たれるかな」と思っても全然違うところにやってくる。先生の手は予測ができないのですね。



天元戦の五番勝負は、2勝1敗になり…当時は二十代の挑戦者は珍しく、ましてやタイトルを取るようなことはほとんどなかったので、僕に対する注目度がかなり高くて、緊張と圧迫感から眠りが浅くなった記憶があります。でも、地方を回り、大勢の方に歓迎されて、すばらしい環境を用意していただける。

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