見よ、これが指し盛りだ

両者とも息を吸い、水を飲むように、最近はこればかりを連採している。現代角換わりの序盤戦は先手がいかによい形で仕掛けるか、後手はそれをどう阻止するかが急所だ。だからお互いに最善形を巡って、玉や金を動かして手待ちをするのである。



本局では佐藤が工夫を見せた。2図で▲6六歩。この局面は前例が20局近くあるが、▲3七桂、▲6八玉、▲9六歩の3つしか指されていない。いわば佐藤の新手である。これまでの感覚ではここで6筋の歩を突くのは早いが、△7三桂〜△6五桂の速攻を封じているのだ。





そして佐藤が居玉で駒組みを進めているのも見逃せない。将来、玉を移動して手待ちをする際に、6九〜6八〜7九といった筋もあるので、5九に置いたままのほうが手広いのだ。



一見、先手は不思議な手順だが、明快な意図がある駒組みである。だが広瀬は「研究会で経験していて、先手の意図に気づいていたのが大きかった」と明かす。佐藤は▲9六歩(3図)。△9四歩と受けそうだが、広瀬は△3一玉と手抜いた。▲6八玉△4四歩▲7九玉に△6五歩(4図)。「端歩を手抜けば先攻できることが分かっていた」と広瀬。形勢は互角だが、後手で先に仕掛けられたのは大きい。「自分は序盤がヘタ」という広瀬にしてはまずまずの進行だ。







※投了までの棋譜と観戦記はテキストに掲載しています。

※肩書はテキスト掲載当時のものです。



■『NHK将棋講座』2019年3月号より

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