「凍結」と「解凍」──戦争の腐乱死体

2つの大戦間において人類学者・社会学者の視点から、この世界のありようを見つめ続けたロジェ・カイヨワ。戦争と人間の本質的な関係を分析した著書『戦争論』の出版から半世紀余りが経ちました。この間には相当に大きな変化が起きています。国際関係や社会の形態にも大きな変化があり、また軍事技術に関しても長足の進歩があって、それが戦争というものの性格をさらに大きく変えています。哲学者の西谷修(にしたに・おさむ)さんがカイヨワの『戦争論』をふまえつつ、その後の変化を視野に入れて、現代の戦争について考察しました。




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核兵器の相互保有によって、冷戦体制は国家間対立というより、西側の資本主義国群と東側の社会主義国群との二大陣営の対立という、強固な枠組みになりました。「冷戦」は英語でいえばCold War ですが、核を抱えて対峙する大国同士は実際には戦争(War)ができない。もし戦争になれば、双方の破滅を招きますから、もはや勝利はない。その意味では、核兵器は戦争を「不可能」にしたのです。それによって戦争は「凍結」されたのだといってもいいでしょう。



この状況は「相互確証破壊(Mutual Assured Destruction 略称MAD!)」として理論化されました。

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