西田幾多郎が拓いた「哲学の道」

『善の研究』は日本を代表する哲学者、西田幾多郎(にしだ・きたろう)の最初の著作であり、主著と呼ぶべき著作です。西田にとっての「哲学の道」とは何であったのか、批評家、東京工業大学教授の若松英輔(わかまつ・えいすけ)さんが解説します。




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\r\n■「問い」の哲学\r\n


西田幾多郎の文章は難解なことで知られています。なかでも『善の研究』は、もっともむずかしいものであるとされています。もちろん、簡単な文章ではありません。それは一見しただけで分かります。



ただ西田は、わざと難解に書いているのではないのです。彼は自分が歩いた道をむずかしく語ったのではなく、ありのままに語ろうとしただけです。



現代の私たちはこの本で西田が用いているのよりも、ずっと平易な言葉で哲学について語ることができます。しかしそれが可能なのは私たちが、彼の拓(ひら)いた「哲学の道」を歩いているからなのです。



今日の私たちにとって「哲学」はすでに存在するものですが、西田にとってはそうではありませんでした。当時の日本に体系だった哲学は存在しておらず、西田は彼が直面していた「問い」を深化させることができる言葉と文体を発明しなくてはなりませんでした。

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