難解な『善の研究』はこの順序で読もう

この「彼方の世界」は西田のいう「宗教」と同質のものです。しかし、西田が考えた哲学は、彼方の世界への理解は日常の生活のただなかで深めることができると証明しようとしたものでもあったのです。


\r\n■最初に読むべき「知と愛」\r\n


それでは、まずは第四編「宗教」から『善の研究』の本文を読み進めていきましょう。なかでも、最初に読みたいのは第四編の最後に「付録」のように置かれている「知と愛」という随想です。



最後に置かれた文章こそ、『善の研究』を読み解くうえで「扉」のような役割を果たしているのです。この文章は他の本文とは主題の展開も文体も異なっているため、これまであまり重要視されてきませんでした。



「知と愛」とは愛知、すなわち哲学(フィロソフィー)のことです。この素朴な事実に気がつくと、一見性質が異なるこの短文を西田があえて『善の研究』に収録した意味も明らかになってきます。「知と愛」の章ほど、よい「西田幾多郎による西田幾多郎入門」はないのです。



西田は、自分が書いている文章が、簡単に理解されるものではないことをよく理解していました。しかし、「知と愛」は違います。この文章を繰り返し読むことで私たちは西田の哲学の核となる部分を垣間見ることができます。

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