『モモ』の語り出し「むかし、むかし」が意味すること

『モモ』の語り出し「むかし、むかし」が意味すること

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『モモ』は、ドイツの児童文学作家ミヒャエル・エンデが1973年に発表したファンタジー作品です。76年には邦訳が出版され、現在までに累計発行部数が341万部を超える人気を獲得しました。多くの児童文学作品に共通する「むかし、むかし」という語り出しで始まりますが、『モモ』の場合はその意味合いが違うといいます。京都大学教授、臨床心理学者の河合俊雄(かわい・としお)さんが、冒頭部分を読み解きます。




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この作品はモモという名前の不思議な女の子が主人公です。物語はこんなふうに始まります。


むかし、むかし、人間がまだいまとはまるっきりちがうことばで話していたころにも、あたたかな国々にはもうすでに、りっぱな大都市がありました。
(1章 大きな都会と小さな少女)



「むかし、むかし」という語り出しは、世界に共通する形式です。読者は「そうか、昔話が始まるのか」と思うわけですが、実はここに注意が必要です。というのも、『モモ』のドイツ語の原文を見てみると、「In alten, alten Zeiten」(すごくむかし、むかしの時代のことです)とあるからです。



ドイツ語の昔話はたいてい「Es war einmal」で始まります。

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