感染症の厄介さをそのままに描く『ペストの記憶』 3つの優れた特徴

感染症の厄介さをそのままに描く『ペストの記憶』 3つの優れた特徴

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『ロビンソン・クルーソー』で知られるイギリスの作家ダニエル・デフォー。ペストがイギリスに上陸するとのうわさが飛び交うなか書いたのが『ペストの記憶』(1722年刊)です。1665年にロンドンを襲ったペスト大流行を、当時の公的文書や実際の逸話をもとにデフォー独特の複眼的視点で再現したこの作品は、現代の私たちにも大きな示唆を与えてくれます。本作の特徴を、英文学者、東京大学准教授の武田将明(たけだ・まさあき)さんに解説していただきました。




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『ペストの記憶』の舞台は、同書執筆の57年前、1665年のロンドンです。王政復古から5年、ロンドンは経済活動が活発で、人口も増えていました。ロンドンの中心部は「シティー」と呼ばれる壁で囲われた区域で、古くから自治権を持っていました。デフォーの父も、商人であると同時にこのシティーの行政に関わっていました。『ペストの記憶』が主な舞台とするのはこのシティーとその周辺です。



フォー(デフォー出生時の姓)一家はペスト流行時には地方に避難していたため、この本に書かれている逸話はどれもデフォー本人が目撃したものではありません。しかし、父の兄にヘンリー・フォーという人物がいて、やはりロンドンに住んでいました。

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