17世紀のペスト大流行 ロンドン行政府の対応は

17世紀のペスト大流行 ロンドン行政府の対応は

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デフォーは生まれながらのロンドン市民であり、同時にロンドンを新しい「帝国」の中心として考える視点を持っていました。ゆえに、市民と行政の双方の視点からペスト流行を見ることができた。これが『ペストの記憶』に記録文学としての奥行きを与えています。英文学者、東京大学准教授の武田将明(たけだ・まさあき)さんが、『ペストの記憶』から、ペスト流行に際して行政がとった対応を読み解きます。




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新型コロナウイルス流行時、行政がとった対応について様々な意見が噴出しました。その是非については将来の検証を待つのが賢明であり、私がいま論評すべきことではありません。本講では、あくまでも『ペストの記憶』の記述に沿って、パンデミック下で行政に何ができるのか、行政と市民のあいだでどのような葛藤が生じるのかについて、冷静に吟味していきたいと思います。



『ペストの記憶』の特徴は、物事の両面を描いているために、語り手の言うことがしばしば矛盾して見えることです。ですから行政の対応についても、良い面と悪い面の双方が描かれています。なお、『ペストの記憶』で描かれるのは、主にロンドンの中心部であるシティーの行政府の対応です。



まずは良い面に注目してみましょう。

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