文明が進むほど災害がその激烈の度を増す 寺田寅彦の警句





しかし、実際はどうでしょう。たとえば近年頻発する集中豪雨では、河川の氾濫(はんらん)や土砂災害による被害が大きくなっています。別の言い方をすれば、私たちはどんどん災害に弱くなっている。



寺田は、文明の進化を妄信している人間自身が、災害が大きくなる、その原因を作っているのだと指摘します。「文明が進むに従って人間は次第に自然を征服しようとする野心を生じた」と書いたあと寺田はこう記しています。


そうして、重力に逆らい、風圧水力に抗するような色々の造営物を作った。そうしてあっぱれ自然の暴威を封じ込めたつもりになっていると、どうかした拍子(ひょうし)に檻(おり)を破った猛獣の大群のように、自然が暴れ出して高楼を倒潰(とうかい)せしめ堤防を崩壊させて人命を危くし財産を亡ぼす。その災禍を起こさせたもとの起こりは天然に反抗する人間の細工であると言っても不当ではないはずである。
?(「天災と国防」)



文明は、自然を思うままに操ろうとした。それはときに猛獣がいる檻を、自ら壊すようなことになる、というのです。古来、文明は人の住めない場所を、大勢が集(つど)い暮らす都市に造り変えてきました。森の木を伐(き)り、山を削り、あるいは水辺を埋め立て、より豊かな暮らしができるよう、人間の都合で自然を、寺田の言葉でいえば「細工」してきたわけです。

関連記事(外部サイト)