いよいよ見えてきた「人工肺」の実用化

<豚の胸腔に移植した「バイオ工学肺」が正常に機能した実験結果は、移植を待つ人々に大きな希望をもたらす>

肺の移植を待ちながら、命を落としてしまう人々がいる。そもそも全ての患者が、適合する臓器の提供を受けられるわけではない。仮に移植を受けられたとしても、免疫系の拒絶反応などでうまくいかないことも多い。

科学者はこうした問題を、何とか解決しようと研究を続けてきた。テキサス大学医学部の研究チームは14年、ヒトの肺を人工培養することに成功。先頃は培養した人工肺を豚に移植することに成功し、その研究結果が8月、サイエンス・トランスレーショナル・メディシン誌に掲載された。

研究チームはまず、移植対象の豚とは関係のない動物から肺を取り出し、全ての血液と細胞を除去して、タンパク質から成る「肺構造の足場」を準備。栄養素を含む溶液で満たした培養槽にこれを入れ、移植対象となる豚から肺の一方を取り出して、その細胞を「足場」に加えた。30日間にわたって培養を続けたところ、移植対象の豚と組織適合性のある肺に成長した。

豚が選ばれたのは、胸腔が大きいという理由からだ。移植を受けた豚のうち数匹は手術の合併症によって死亡したが、論文の筆頭著者であるジョーン・ニコルズによれば生き延びた豚は健康だった。胸腔内で正常に機能する血管網も形成された。

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