美しくダークな北欧ホラーは「異端」の恐怖を見せる

<思春期の変化に戸惑う少女を同性愛と絡めて描く異色作『テルマ』>

ノルウェーの田舎町。信仰心のあつい厳格な両親。自分の持つ危険な力に目覚めるヒロイン。時折起きる謎の発作。ホラー映画の王道を行く設定に思えるが、ノルウェーの鬼才ヨアキム・トリアーの監督作『テルマ』は主人公に別の、存在そのものを脅かす「恐怖」を用意している。彼女はレズビアンなのだ。

安っぽいB級映画になりかねない題材を、トリアーは抒情的かつダークで優美なイメージに満ちた作品に仕上げた。眠るテルマ(エイリ・ハーボー)に近づく野生の動物たち。彼女の感情が高ぶったときの強い光。恋人とのキスを想像するテルマの体に絡み付く黒い蛇――。

「超常現象を扱う映画は多いのに、人間とは何かを問う作品がないのは理解できない」と、トリアーは本誌に語る。「観客の気分を高揚させ、解釈の余地を与える映画の力をなぜフルに生かさない?」

なるほど、スーパーヒーローものでもエイリアンものでも、世界的ヒット作の主人公はたいていストレート(異性愛)の白人男性だ。強くて無難なヒーローばかりで、異端の変わり者なんてあり得ない。

一方、本作は『メッセージ』や『イット・フォローズ』など主役の異質さを受け入れるホラー映画の流れをくむ。テルマは同性愛と、抑圧的なキリスト教徒の両親に認められたい気持ちとの板挟みで心因性の発作に苦しむようになり、大学でも孤立する。

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