音声は出版の新しいフロンティア──文字以上の可能性を秘めている

<AI「音声エージェント」によって、音声は出版の新しいフロンティアとなった>

出版にとって「デジタルの衝撃」が何であったかは、米国でも立ち位置によって、見え方は大きく異なる。しかし、出版市場における最大のサプライズは、誰が見ても「オーディオブック」だろう。これが一つのフォーマットという以上の存在となると考えた人は少ないと思われる。

読書における「モード」

録音・再生技術で音声読書をサポートする商品は、1世紀以上前から存在し、カセットテープやCD-ROMを媒体として一定の存在ではあり続けたものの、それはつねに紙の本の影の存在で、目が使えない時のものだった。専用のツールを必要とし、もちろん安くはなかった。それ以上に大きいのは、「視覚読書能力」をデフォルトとして個人や社会が形成されてしまったことだ。聴覚のほうは職業的にアンバランスな場合が多く「無用」という人もいる。

しかし、デジタル時代はメディアによってモード(状態)を遷移することができる。デジタルとモバイルWebは、読書におけるモードを自在に移行可能にした。それまで「読書」にはモードがなく、活字が配布される以前は耳から伝えられ、暗記・復唱は言語能力の基本だった。

活字は「耳の集中」から人々を解放したが、代わりに「黙読」や「速読」という別のノルマを課した。

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