「美人銭湯絵師」の盗作疑惑に見る「虚像」による文化破壊

勝海氏が語る経歴にまつわるエピソードや芸術論にも、他人の経歴や言葉との重複が多く見つかった。人々がネット上の情報を掘れば掘るほど、「虚像」が膨らんでいった。

対照的なリアルな銭湯絵の世界

「銭湯」は、近代日本の代表的な庶民文化だ。そこに、平成生まれの若いきらびやかな美女が入るコントラストが、抜群のPR効果を発揮するという発想は理解できる。ただ、筆者が過去の取材で実際に見た銭湯の「ペンキ絵師」の世界は、非常に地味でつつましく堅実なものであり、やはり「勝海麻衣」という存在の違和感は拭えない。

私は、勝海氏と元師匠の丸山氏とは面識がないが、2011年2月に、残る2人の銭湯絵師である中島盛夫さんと田中みずきさんに実際に会ってインタビューしている。中島さんは1945年生まれのベテランで、丸山氏とは兄弟弟子の関係にある。1983年生まれの田中さんは当時、中島さんの弟子としてインタビューに同席した(現在は独立して3人目の銭湯絵師として活躍している)。お二人に話を聞いたのは、帰国子女・海外子女向けの教育雑誌で、海外に住む日本文化に触れる機会が少ない子供たちのために、母国の知られざる文化を分かりやすく紹介するためだ。

今俗に「銭湯絵」と言われている銭湯の壁画は、白・赤・紺・?の4色のみの速乾性のペンキで一気に描き上げるペンキ絵だ。

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