去りゆく象徴、善良なる男性、平成日本の「普通の天皇」

<私は1度だけ、今上天皇にお会いしたことがある――。震災体験の中で本領を発揮したその人物像を、本誌の元東京支局長が思い起こす>



※ニューズウィーク日本版SPECIAL ISSUE 「ニューズウィークが見た『平成』1989-2019」が好評発売中。平成の天皇像、オウム真理教と日本の病巣、ダイアナと雅子妃の本当の違い、崩れゆく大蔵支配の構図、相撲に見るニッポン、世界が伝えたコイズミ、ジャパン・アズ・ナンバースリー、東日本大震災と日本人の行方、宮崎駿が世界に残した遺産......。世界はこの国をどう報じてきたか。31年間の膨大な記事から厳選した、時代を超えて読み継がれる「平成ニッポン」の総集編です。
(この記事は「ニューズウィークが見た『平成』1989-2019」収録の書き下ろしコラムの1本)


◇ ◇ ◇

そのとき、歴史を振り返らずにいることは不可能だった。昭和天皇の大喪の礼の当日、弔意を示すべく参列する各国指導者などの要人の到着を、ほかの取材陣と一緒に待っていたときのことだ。

一国を治める「現人神(あらひとがみ)」から「普通の人間」に転じた存在、それが昭和天皇だった。彼を崇拝の対象としたこの国は破滅的な戦争に突き進み、敗戦後の廃墟と焦土の中から驚異的な復活を遂げた。

1 2 3 4 次へ

関連記事(外部サイト)