シリアのイドリブ県で戦闘が激化するなか、政府軍が再び化学兵器攻撃か?

だが、リークされた機密文書は、塩素ガス攻撃に使用されたとされるシリンダーは、その軽微な損傷ゆえに発見現場に「手作業で置かれた」(manually placed)可能性が高いと指摘していたのである。

最終報告書に盛り込まれることのなかったこの文書をリークしたのは「シリア、プロパガンダ、メディアに関する作業グループ」(Working Group on Syria, Propaganda and Media)で、シリア軍の化学兵器使用について疑義を呈してきたジャーナリストのヴァネッサ・ビーリー氏らが参加する組織だ。「アサド政権支持者」との非難を浴びるグループが発信源で、機密文書を作成したというイアン・ヘンダーソン氏なるOPCWの重鎮が、現地調査団ではなかったとの情報が錯綜するなかで、機密文書が偽者だとする見方も散見される。

真偽はともかく、ラタキア県での塩素ガス使用疑惑であれ、OPCW機密文書であれ、シリアで使用される化学兵器は、軍事的効果以上に政治的効果を狙ったものであることだけは、誰の目にも明らかだ。そして、こうした効果が期待されるのは、常に反体制派が窮地に立たされている時であり、紛争の当事者たちは、こうした状況下で、化学兵器使用(疑惑)にさまざまな政治的意味を与えようと躍起になっているようである。

<ヤフー個人より転載>

青山弘之(東京外国語大学教授)

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