ラッパーECDの死後、妻の写真家・植本一子が綴った濃密な人間関係

<人間関係が希薄になったと言われるが、著者が娘2人と暮らしているのは東京のど真ん中。この日記は心に「なにか」を残してくれる>

昨年1月24日に、ラッパーのECDが進行性のがんで世を去った。享年57、早すぎる死だった。

現在は作家・書評家としての仕事がメインになっているが、文筆家としての私のキャリアは音楽ライターから始まった(今も続けている)。だから音楽業界については相応の知識を持っているつもりだが、活動のベースが一貫してアンダーグラウンドにあったECDについては、ヒップホップに詳しくない方はあまり馴染みがないかもしれない。しかし国内ヒップホップ・シーンの黎明期から活動を続けてきた、紛うことなきシーンの重鎮であった。

ちなみに私が文章を仕事にすることになったのは、ECD(本名で石田さんとお呼びしていたので、ここから先は石田さんと書かせていただく)のファースト・アルバムにひっそりと収録されていた曲がきっかけだった。

「アタックNo.1」というその曲に込められた、「やりたいことがあるなら、御託を並べずにやれ」というメッセージに感化されたのだ。だから私にとっての石田さんは、進む勇気を与えてくれた恩人でもあった。

ただ、石田さんと私の関係には、どこか中途半端な距離感があったのも事実だ。

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