抗生物質が効く時代はあとわずか......医療を追い詰める耐性菌に反撃せよ

<猛烈な勢いで耐性を付けた病原体には打つ手がない----安易過ぎる抗生物質の多用が人類の危機を招いている>

大腸菌の特異な変異体のせいで体調を崩した患者が4人いる──米コロンビア大学(ニューヨーク)のアービング医療センターがそう発表したのは今年1月のこと。世間では話題にもならなかったが、感染症の専門家の間には衝撃が走った。

大腸菌は誰の体内にもたくさんいるありふれた細菌で、私たちの腸内にいる限りは無害だが、食物や指などを経由して血中に入れば私たちの命を冷酷に奪う変異体になることもある。抗生物質が効かなければ、感染した人の半数が2週間以内に死亡する。

だからこそ、コロンビア大学で見つかった大腸菌には慎重に対処しなければならない。ここ10年、20年で、大腸菌は次から次とさまざまな抗生物質への耐性を獲得してきたからだ。

残された唯一の希望はコリスチンという抗生物質だが、あいにく強い副作用があり、腎臓や脳にダメージを与える恐れがあるため、誰にでも投与できるものではない。しかもコロンビア大学で見つかった大腸菌ではmcr-1遺伝子に突然変異があり、なんとコリスチンへの耐性も獲得していた。

「こうなると、もう有効な抗生物質は残っていない」。そう言ったのはマサチューセッツ総合病院感染症科感染管理部門のエリカ・シェノイ。

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