アメリカが拷問と、いまだに決別できない深刻な理由

<拷問と虐待が大問題になり、オバマ政権下で改革が行われて10年――尋問官の行動が変わらないのは、拷問に効果があるからではない>

第二次大戦時のドイツ空軍の尋問官ハンス・シャルフは、終戦時には敵国でも伝説的な存在になっていた。

実業家だったシャルフが徴兵されてナチス・ドイツの軍隊に加わったのは、1939年。その後、捕虜として捕らえた連合国軍のパイロットの尋問官役を務めるようになった。

するとたちまち、ドイツ空軍内で高い評価を得るようになる。捕虜から重要な情報を引き出す能力が卓越していたのだ。しかも、捕虜に指一本触れずに目覚ましい成果を上げた。「彼なら修道女に性的不品行を告白させることだってできるだろう」と、尋問を受けたことがある人物の1人はのちに語っている。

戦後、米国防総省が弾道ミサイル計画でナチスのロケット科学者だったウェルナー・フォン・ブラウンの力を借りたように、シャルフの専門技能も米軍の目に留まった。米空軍はシャルフを招いて尋問手法を講義させ、そのテクニックを空軍の教育機関でも取り入れた。

その後、シャルフ流の尋問法の有効性が広く認められるようになったが、アメリカの軍と情報機関の現場では必ずしもそれが実践されていなかった。その傾向は、01年の9.11テロでニューヨークの世界貿易センタービルとワシントン郊外の国防総省がテロ攻撃の標的になった後、いっそう強まった。

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