名車ビートルが残した、アートカーの豊かな歴史

<ナチス・ドイツがつくり出した国民車は、創造力と自由を刺激する最高のキャンパスだった>

「かぶと虫」に最後の日がやって来た。ドイツの自動車大手フォルクスワーゲンは7月10日、メキシコの工場で小型車「ビートル」の最後の1台を出荷し、その生産を中止した。

ビートルは1938年、安価で高性能な車を国民に供給するというナチス・ドイツの国民車構想の下で誕生。その後80年にわたって世界中で愛されてきた。

メキシコでは「ボチョ」の名で知られ、緑と白に塗られてタクシーによく使われた。フランスでは「コクシネル(テントウムシ)」と呼ばれ、曲がりくねった古い街並みを走ってきた。そしてアメリカでは親しみを込めて「バグ(虫)」と呼ばれ、型にはまらない個性を象徴するようになった。

筆者は大学で「自動車とアメリカンライフ」という授業を担当しているが、最初に紹介する車は世界初の量産車であるT型フォードではない。ハロッド・ブランク監督のドキュメンタリー『ワイルド・ホイールズ』に登場するビートルのアートカーだ。ボディーにさまざまな装飾を施したアートカーは、創意工夫と自由の象徴だと思うからだ。

49年にアメリカに初上陸した当時、ビートルは大半のアメリカ人が初めて見るタイプの車だった。鋭角的で図体が大きくオーバーヒートしやすいアメリカ車と違い、丸みを帯びた形が特徴的で、価格は安いのに優れた性能を備えていた。

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