世界で最も有名なオオカミ「OR-7」を知っているか?

サウスダコタ州東部では「害獣」に分類されており、見つけたらその場で合法的に射殺できる。

アイダホ州は西部の玄関口であり、オオカミにとって重要な州だが、連邦政府によるオオカミ保護を州議会が取り消し、オオカミの狩りが一年中許可されている。同州のブッチ・オッター知事は推定770頭といわれるオオカミを150頭まで減らすと約束。オオカミを効果的に殺すために年間数十万ドルもの予算をつぎ込んでいる。

アイダホ州の漁業狩猟当局は、ヘリコプターからオオカミを狙撃する猟師を雇い、原生自然環境保全地域に罠も仕掛けた。表向きはエルクの数を増やすためとされるが、エルクの個体数は今でも目標値を超えている。

オオカミが牛を殺すケースは、牧場主が訴えるほど多くない。農務省の報告によれば、牛の死亡例の95%、羊の72%はオオカミと無関係だ。

家畜の主な死因は呼吸器疾患や感染症、脱水、飢餓、出産合併症または有毒な雑草の摂取など。肉食獣による被害は、ほとんどがコヨーテや飼い犬、ピューマ、ボブキャットの仕業だ。オオカミはたまに家畜を殺すが、その代償に命を失う。

16年3月にオレゴン州ワローワ郡でOR-4(OR-7の父)の率いる群れが家畜5頭を襲う事件が起き、群れのオオカミ4頭が射殺された。ワイスによれば、リーダーのOR-4は年老いて、もはや野生の動物を狩ることができなくなっていたという。



保護活動家によれば、リーダーが殺されると群れは不安定になり、食料を求めてメンバーがより広い地域に分散し、結果的に家畜を襲う可能性が高まるという。しかし、オオカミが家畜を襲った事件は16年に24件だったが、17年には17件に減っている。

家畜の被害が減れば減るほど、オオカミが生き残る確率は高まる。例えばオレゴン州では州内を2つの地域に分け、それぞれに異なる個体数の回復目標を設定している。オオカミの個体数が増えるにつれて、保護の度合いは緩くなり、オオカミにとっては殺されるリスクが高まる。なにしろ州政府の保護政策に背を向けたオオカミ嫌いの人たちのモットーは「殺せ、埋めろ、秘密にしろ」なのだ。

一方、OR-7はオオカミ本来の暮らしを送っている。食べて、寝て、子を育てるだけだ。牧場主にとっては目の敵だが、保護活動家にはアイドルだ。

「今もOR-7の姿を見たくて、出合いそうな場所でハイキングやキャンプをしている」と語るベッキー・エルギンは『旅──歴史を作ったオレゴン・ウルフOR-7の驚くべき物語』という児童書の著者。「OR-7のおかげで、人々はオオカミが環境にどれほど重要であるかを認識し、オオカミが生息できるほど自然が残る地域に住むことがどんなに恵まれたことかを実感できる」のだと言う。

半年ほど前、オレゴンの野生生物学者スティーブ・ニエメラはジャクソン郡で道を走る1頭の動物を目撃した。OR-7だったと思いたいが、たぶんただの大型犬だろうと彼は言う。「あり得ないよな」。そのとき彼は仲間につぶやいた。「でもやっぱり、あいつだったと信じたい」

<本誌2019年1月1日、8日号掲載>


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ウィンストン・ロス(ジャーナリスト)

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