「58円の野菜も丁寧に包装」日本の農家がやりがい搾取の地獄に陥った本当の理由

「58円の野菜も丁寧に包装」日本の農家がやりがい搾取の地獄に陥った本当の理由

日本のカイワレ大根(左・写真提供=三和農林)、アメリカのスプラウト(右・写真提供=新潮社)

日本のスーパーマーケットには廉価でも見た目の美しい農産物が並ぶ。民俗学者でレンコン農家の野口憲一さんは「日本では消費者も農家も『野菜は美しくて当たり前』という価値観を持っている。それこそが農家にやりがい搾取を強いている」という――。※本稿は、野口憲一『「やりがい搾取」の農業論』(新潮新書)の一部を再編集したものです。

■海外のカイワレ大根は長さが不揃い

有機農業であろうと植物工場のような栽培方法であろうと、農業にとって重要なのは農家としての高い技術や技能、そして植物への愛情です。

このような植物に対する捉え方、すなわち農業観は何も農家の中にだけ存在しているわけではありません。このような感覚は、文化として社会全体に存在しているというのが民俗学者としての私の見解です。その証拠として、日本のスプラウト野菜の代表格であるカイワレ大根と、アメリカのスプラウト野菜を比較してみてください(図表1)。

アメリカの売り場の写真にうつっているのは、さやえんどう(snow pea)とひまわり(sunflower)のスプラウトです。カイワレ大根とは作物の違いはありますが、着目していただきたいのは、その形状です。カイワレ大根が整然とした長さに揃っているのは単なる偶然ではなく、農家の技術の結晶なのです。食物としての合理性のみを追求すれば、アメリカの売り場のようなカイワレ大根でも別に構わない。

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 次へ

関連記事(外部サイト)