山崎ナオコーラ「父親が父乳を出して子育てをする物語を書いた理由」

山崎ナオコーラ「父親が父乳を出して子育てをする物語を書いた理由」

山崎ナオコーラさん(写真提供=本人)

父親が“父乳”を出して子育てする「父乳の夢」、小柄な妻がロボットを装着することで怪力になる「笑顔と筋肉ロボット」ほか、ユニークな視点で性別にまつわるモヤモヤを見つめる計4編を収めた小説集『肉体のジェンダーを笑うな』。著者の山崎ナオコーラさんは、これまでも容姿や経済格差など、身近に存在する差別をテーマにした作品を発表してきました。固定観念を突き崩し、文学の中で新たな気づきを与えてくれる山崎さんに、「先入観」や「こうあるべき」の呪縛から逃れるヒントを聞きました――。■悔し紛れの気持ちで書いた作品

??「肉体のジェンダー」をテーマに作品を書こうと思ったきっかけは?

【山崎ナオコーラさん(以下、山崎)】4編のうち最初に書いたのは「父乳の夢」なのですが、その時、子供が生まれて2か月で、私は授乳中でした。社会参加がしたかったのに授乳中でなかなかうまくいかなかったので、悔し紛れのような気持ちで書いたと記憶しています。

「授乳と社会を結びつけたいこの気持ちを、むしろ仕事に活かせるのでは?」と状況を逆手に取ろうともがいたところから生まれた作品です。

それまで、「肉体に関するものは絶対的なもので、文化や社会と関係ない」という思いがあったのですが、考えてみると、良いナプキンが発明されたら生理中でも仕事ができるようになったし、ロボットが進化すれば筋力がない人でも肉体労働ができるようになるだろうし、実は肉体も「社会」ではないでしょうか? 「筋力や生理も、時代と共に変化していく」と思うと、それもジェンダーだととらえることができます。

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