迷惑YouTuberに「勝手に自分を撮られた」場合、法律で対抗できるか

迷惑YouTuberに「勝手に自分を撮られた」場合、法律で対抗できるか

※写真はイメージです

YouTubeやライブ配信アプリなどを使い、だれでも動画を配信できるようになった。それだけで生計を立てているYouTuberやライバー(配信者)はもちろん、収益化していない“自称”レベルまで含めたら、相当数が存在していると思われる。都内の繁華街では、それらしき人が撮影している姿を見かけることも珍しくない。なかには、公共の場にもかかわらず、周囲の迷惑もかえりみないトンデモ行動に走る連中も……。

 たまたま見ていたYouTubeの動画に「知らぬ間に自分が映っていた」「勝手に自分が撮られていた」なんて事態もありうる。さらに、それがネガティブな内容で拡散されていたら……考えただけでも恐ろしい。

 そんなとき、どのように対応すればいいのだろうか。今回は現役グラビアアイドルの吉沢さりぃ氏が「気持ち悪かった」と話す実体験を紹介したうえで、青山北町法律事務所の松本理平氏に見解をうかがった。

◆繁華街で勝手に自分の姿を撮られた!

 夜中の23時頃、私(吉沢さりぃ)は友人と飲んだあと、「早く帰りたい」と思っていた。

 場所は新宿・歌舞伎町のドンキホーテ前の交差点。信号が青になったところでJR新宿駅方面に向かって小走りすると、なにか視線を感じた。「あ〜、またスカウトか」と思いつつも目をやると、明らかにスカウトマンではない男がいたのだ。

 見た目はいたって普通のサラリーマン。しかし彼は、スマホに向かってブツブツと話しかけている。次の瞬間、カメラの角度を変えると、自撮りのようなかたちで私まで写し込んだのだった。

◆知らないところで誰かに見られているのが気持ち悪い

 ほんの数十秒のことだが、私は見逃さなかった。その男のスマホには、私の顔から胸までばっちりと収まっていた。あれは間違いなく、何かしらのライブ配信である。というのも、話の内容までは聞き取れなかったが、画面の上下に動く文字のようなものが見えたからだ。

 私が睨み付けると、男は大久保方面に走って逃げていった。別に自分が「著名人だから勝手に撮るな」という上から目線のクレームでは全くない。

 勝手に撮られたことはもちろん、(視聴者が何人いたのかわからないが)自分の知らないところで私を見ていた人がいる、そして、それに対してコメントをする人がいるという事実がシンプルに気持ち悪かったのだ。

◆いきなりの声かけ「僕、YouTuberです!」

 またこんなこともあった。夜20時過ぎ、新宿駅東口の階段を登って、友人が待つ喫煙所に向かっている最中だった。色黒の男が「こんばんは! 僕、YouTuberです!」といきなりカメラを向けてやってきた。こちらが「なんや、コイツ」と突っ込む暇も与えず、その自称・YouTuberはマシンガントークを続ける。

「今ですね、企画で色んな人の人生相談に乗ってるんです! お姉さん、パッと見た感じ企画に向いてそうなんで! なにか相談お願いします!」

 呆気にとられてしまった。なぜ、見ず知らずのYouTuberに自分の人生相談なんかしなければいけないのか……。

◆撮影された動画が使われているのかさえ不明

 企画の内容はさておき、彼らは“YouTuber”とは言いながらも、自分の名前やチャンネル名を名乗らず、出演の承諾を得る前からいきなり動画をまわしていた。もしも事前に企画の趣旨を説明したうえで、謝礼としてAmazonギフト券の1000円分でもくれるのならば協力したかもしれない。それが唐突にカメラを向けられて「さぁ、どうぞ!」という状態だった。私は「無理です。この動画も使わないでください」と告げた。男からは「頼むよぉ〜」と頭を下げられたが、強く断ったところ、大きく「チっ!」と舌打ちをして去って行った。

 その様子を悪びれることもなく撮影していたので、おそらく彼は常習犯なのだろう。結局、使われているのかどうか知らないが、不愉快極まりない。私は気が強いので「嫌なものは嫌だ!」と言えるが、なかには断れない女性もいるのではないかと思った。

 そもそも彼らの行為は、なんらかの法律違反なのではないか……? そこで、今回のようなケースの法的見解や対応について、青山北町法律事務所の松本理平氏に話を聞いた(以降は、取材・文/藤井厚年)。

◆弁護士の法律的な見解

 YouTubeやライブ配信に関するトラブル、インターネット上の書き込みにまつわる損害賠償請求などに対応する弁護士の松本氏が言う。

「無断で動画撮影をされた場合、撮影された側として受けるデメリットは、一般的には①自分の容姿を外部に拡散されること、②私生活の状況を公にされること。また、企画内容次第では③個人の名誉を害されることにもなります。たとえば、『街の変人に声をかけてみた!』などの企画でライブ配信や動画を撮影されたケースですね。

 法律上、①は最高裁判所の判例で『承諾なしにみだりにその容ぼう・容姿を撮影されない自由を有する』と認められており、呼び方には諸説ありますが、一般的に“肖像権”と呼ばれ、憲法上保護された権利の侵害行為です。②も法律上の定義には諸説ありますが、一般的に“プライバシー権”として憲法上保護されている権利の侵害行為となります。

 ③については、刑法230条により、3年以下もしくは禁錮または50万円以下の罰金の刑罰が科される“名誉棄損罪”が成立する行為になります」

 とはいえ、YouTuberやライブ配信者に「法律違反になる恐れがある行為」という認識はないはずだ。

◆警察に通報するだけではなく…

 撮影されてしまった被害者は、突然の出来事に頭が真っ白になってしまうだろう。そんななかで、どのように対処すればいいのだろうか。

「結論から言えば、①名誉棄損の可能性があるとして警察を呼ぶ、②加害者の身分証の写真を撮るなど、氏名・住所などの個人情報を抑えるという対応が正解だと思います。

 ただし、肖像権やプライバシー権については、残念ながら刑罰が科せられる規定はありません。東京都・福岡県など地方自治体が独自に定める迷惑防止条例も、あくまで下着など衣服により隠れている部分の撮影を禁止するという内容です。

 過去、下級裁判所の裁判例において、ジーンズをはいた女性に数百メートル付きまとい、臀部の動画を撮影したという事例が迷惑防止条例違反か争われたりしました。ですが、性的な自由にかかわる場面でなければ、無断撮影が刑罰に問われることは、ほぼないと言っていいでしょう。そのため、民事上の損害賠償請求を行うことで対処するしかありません。

 他方、名誉棄損については、民事上の損害賠償請求と同様、無断撮影の時点で判断はつきにくいのですが、刑事告訴を行うという対処が考えられます」

◆相手の身分証を抑えるなどの「加害者の特定」が必要

 しかしながら、民事訴訟や刑事告訴を行う場合にネックとなるのが「加害者の特定」だと松本氏は言う。

「加害者の氏名・住所が少なくとも必要になります。民事訴訟や刑事告訴を行おうとするときに、加害者の個人情報がないために断念するということが多々あります。また、探偵や弁護士の調査でも、“とっかかり”がないと厳しい。動画撮影だけされて逃げられたという場合には、そもそも調査が困難です。

 そのため、法的な対応を円滑に行うためにも、名誉棄損の恐れがあるとして警察を呼ぶとともに、身分証などの写真を抑えて氏名・住所を特定する必要があります」

◆YouTubeのチャンネルや運営側に削除を依頼する

 仮に配信された動画を発見しても「加害者の特定」の調査には、弁護士に依頼しても探偵に依頼しても数十万円単位の費用がかかるという。したがって、現実的な対処としては、直接チャンネルや運営側に削除を依頼するのが第一歩になるそうだ。

「アカウントからの個人情報特定は、基本的に弁護士が法的な手続きを行わなければなりません。弁護士への依頼や探偵の調査にかかった高額な費用を加害者に請求できるかどうかは、実務上、認められたり認められなかったり……という状況です。

 もしも、そのような動画を発見した場合には、YouTuberのチャンネルに該当部分の削除の依頼を行い、対応されないようなら運営側に報告、対応を依頼する。それでもだめなら訴訟などの法的手段を検討するという流れになるかと思います」

◆企画内容や承諾の条件はメールやLINEで残しておく

 こうしたトラブルや被害は近年増えているのだろうか。

「現段階では、そこまで相談が増えたという印象はありません。ただ、それは撮影されていることや動画が出ていることに“気づかない”パターンがほとんどだからと思われます。零細のYouTuberや配信者ならば、なおさらですね。

 たまに相談されるのが、撮影は承諾したが、悪意のある編集をされた、最初の説明と違っていたというトラブルです。むしろ、法律相談としてあがってくるのは、このようなケースが多い。ただ、『言った』『言わない』の水掛け論になりがちなので、企画内容の説明や承諾の条件などは、契約書とまでは言いませんが、最低限メールやLINEで残しておく必要があります」

 SNSが発達して一般人でも「メディア」になれる時代となったが、その取り扱いには注意が必要と言えよう。だれもが被害者にも加害者にもなりうるのだ。

「エンターテインメントは自由な発想をもってクオリティが担保されるものだと思います。クリエイターも最低限の節度をもって撮影を行わないと、YouTubeなどの運営側や法律により、その表現の自由が縛られる結果になります。なので、撮影する側には自覚をもって制作を行っていただきたい。撮影される側も被害を受けた場合には毅然とした対応を取ってもらい、自治が成り立つことが理想かと思います」

【青山北町法律事務所・松本理平】
慶應義塾大学経済学部経済学科、九州大学法科大学院卒業。複数の都内法律事務所での勤務及び大手金融機関での出向を経て「青山北町法律事務所」設立。芸能関係の案件・男女トラブル・企業法務などを中心に取り扱う。合同会社 青山北町リサーチ 代表社員(現任)、一般社団法人 探偵協会 理事(現任)、その他コメンテーター等にてメディア露出多数。

<取材・文/吉沢さりぃ(前半エピソード部分)、藤井厚年>

―[日常に潜む「うっかり法律違反」]―

【吉沢さりぃ】
ライター兼底辺グラドルの二足のわらじ。著書に『最底辺グラドルの胸のうち』(イースト・プレス)、『現役底辺グラドルが暴露する グラビアアイドルのぶっちゃけ話』、『現役グラドルがカラダを張って体験してきました』(ともに彩図社)などがある。趣味は飲酒、箱根駅伝、少女漫画。『bizSPA!フレッシュ』『BLOGOS』などでも執筆。Twitter:@sally_y0720

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    死人にくちなしで、貪り放題とか、捜査もろくにしてない段階から、恐ろしい野蛮な私刑提案、はけ口にするかのような罵倒ぶりとか。 過去にどれほどの実務を経験されたのか披露してもらうどころか、憎悪増幅記事と現実世界ばかり。

  • 1

    迷惑メディアの迷惑記事。規範意識の欠落をさらに助長するのやめろよ。

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